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第305回 異常気象が平常になるリスク

2013/08/05

1時間に143ミリも降ったというのだから想像を絶する。7月末に中国地方を襲った集中豪雨である。深さ30センチのバケツを置いたら1時間で半分、2時間で満杯になる。それが低地の川や窪地に集まると、10倍、20倍になる。都会に降ったらどうだろう。窪地にある渋谷駅周辺は間違いなく水没しそうだ。もちろん、荒川や多摩川などの河川が氾濫すれば浸水、水没地域はもっと広範囲に及ぶだろう。地下深くに発達した鉄道網や商店街などは大丈夫なのだろうか。想像するだけで恐ろしい。

多くの都会の施設は1時間の降水量、最大50ミリで設計しているそうだ。143ミリはその3倍近い。先月下旬に東京・目黒地区を襲ったゲリラ豪雨は1時間降水量100ミリということだったが、山手通りのトンネル部分が冠水して通行止めになるなど、交通に影響が出たものの、幸い、非常というほどの大事には至らなかった。しかし、143ミリともなれば、想定外の被害が広がるだろう。 各種のインフラが地下に埋設してあるのも心配である。その一つが電源である。都心には近くて便利だからということでデータセンターも数多くある。最近では、浸水を想定して電源を階上に置く例も見られるが、古いものには地下に設置してあるものもあった。見学にいくと地下に潜ってバックアップ電源の説明も受けた覚えがある。筆者のかねての主張は、首都圏に集中しているデータセンターは遠く、地方に分散すべきだ、ということだ。その移転の際に、今後は浸水の想定を上げて、重要インフラは地下や下ビルの下層部に置くのではなく、階上に設置するようにすべきである。

過去の記録を大きく上回る各種の数値は、「異常気象」と悲鳴を上げているが、恐らく、その原因である地球の温暖化は、「異常気象」をすぐに「平常気象」に変えてしまうだろう。100年に1度の異常な現象が年に数回も起きているなら、それはすでに異常現象ではない。我々は災害対策のレベルを根本的に見直さなければなるまい。

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