HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第310回 未開のエネルギー利用技術
2013/10/15
新しいエネルギー源として亜熱帯に生育するヤトロファを沖縄で栽培技術を確立できないか、という課題をもって熱帯植物の研究者である琉球大学農学部の川満芳信教授に教えを請いに沖縄に行った。川満教授の返答は「可」というもので、快く協力の意向も表明していただいた。ヤトロファは、別名「ナンヨウアブラギリ」と呼ばれ、油分が多く燃料に適しているが、実は毒性が強く、誤って食さないように、むしろ撲滅する標的だった。しかし、現在では、ヤトロファからバイオエタノールを作り出すことによって環境負荷のないエネルギー源として注目されるようになっている。
日本の企業ではモザンビークなどでヤトロファからバイオ燃料を生産する事業も開始されているようだ。
しかし、川満先生はヤトロファの話が一段落すると、もっと幅広く、植物を利用したエネルギー利用技術の話を展開した。これには、驚かされる内容ばかりだった。
その一つが、サトウキビのバカス(絞りかす)を使った技術である。焼き物の登り窯を利用してバカスを高温・酸欠状態で燃やすと炭化して炭ができる。普通に燃やせばバカスの中の炭素は空中の酸素と結びついて炭酸ガスとして飛散してしまうが、酸欠状態で燃やすので、炭酸ガスはできず、炭素の塊となる。炭素の固定化で環境負荷を低下できる。
さらに、この炭を使って海水の淡水化が簡単にできる。原理は至極、簡単である。バカス炭を粉末にして海水を入れた透明のガラス容器に入れて太陽光にさらす。黒い炭が太陽熱を吸って熱をもち、海水を沸騰させる。海水が蒸発した蒸気をパイプで誘導して別の容器に入れて冷やせば真水になっている。ガラス容器に残った海水は、塩分やミネラル濃度の高い液体なので、取り出して加工食品などの原料として利用できるだろう。サトウキビのバカスの炭粉の粒子が、構造上適しているのか、今のところ、他の炭よりも効率よく太陽熱を吸収するそうである。
砂漠と海に囲まれて飲料水に恵まれない中東の地域では、簡単に海水を淡水化せる方法として革命的な技術である。川の水が衛生的でないアジアの地域でも有効だ。水害で一時的に飲料水が使えなくなった非常時にも太陽が照れば水を浄化できるこの技術は有益だろう。太陽エネルギーは、太陽光発電や屋根の上の温水器で熱を利用する手法だけかと思っていたら、とんでもない。目からうろこがいくつも落ちた。
まだ、自然エネルギーを利用する未開発の技術がたくさん隠れているようだ。情報通信革命の次はエネルギー革命・電力革命だと注目されているが、個別にエネルギーを利用する手法も注目しておくべきだろう。