HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第318回 ビッグデータ活用の足音
2014/02/03
ネットでの購買データやツイッターでのメッセージ、交換するメール、どこのインターネットの情報に触れたかのデータ(アクセス履歴)、ユーザーや端末、自動車などの位置データ、これらと関係づけられた時間データなど、毎日、毎時、毎秒、膨大なデータが生まれ、ネットワークの中を流れている。これらの膨大なデータを組み合わせて加工、処理するとその中から意味のある知見や情報を発見できる。ビッグデータである。
この中には個人情報に関係するものがあるので、日本の個人情報保護法の制約を受ける。特に、他社にその情報を提供するにはかなり煩雑な手続きが必要になる。インターネットが社会やビジネスに急速に浸透してくると、日本のこの制約は新しいビジネスやサービスの誕生に大きなネックになってきた。米国で次々とニュービジネス、ニューサービスが生まれて企業が急成長する背景には、日本的なネックが少ないという事情があるのではないか。
これでは日本の経済成長の障害となるということで、個人情報保護法の改定が検討されている。民主党政権の時代から日本の経済成長の潜在的資源として「ビッグデータ」が注目されていたが、自民党政権でもこれが継承されて、その有効活用のネックとなっている個人情報保護法の手直しにようやく着手しようというわけだ。個人情報を保護することは重要な条件だが、それと折り合いをつける「ビッグデータ」の活用ルールがあるはずである。明確な活用ルールを設けて、活用を促進しようというわけである。
ただ、いま検討中の案では、まだ、条件があいまいなところがあって、多数の企業でデータを共用して活用するのに障害になる恐れがある、という懸念が指摘されている。確かに、まだ、「ビッグデータ」を活用する、という目標のために改定案を揉まなければならないところも残っている。
個人データを匿名化し、個人を特定できないデータとして共用すれば個人情報は守られるのではないか、と思うが、現在の技術をもってすれば、組み合わせによっては個人名が消してあっても個人を特定することが不可能ではない。そうした新しい技術を点検して穴をふさぐことが重要である。穴は、次々と別のところが発見されるだろうから、それを追いかけてふさいでゆく努力も必要になる。リスクはどのような社会にもある。リスクと便益・利益とを秤にかけて一つ一つの場面で検討する仕組みを作ってゆかなければならないだろうが、一歩、「ビッグデータ」の活用へと歩み始めたのは心強い。