HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第320回 インターネット大学の全国開放?

U+(ユープラス)

U+のTOPへ

寄論・暴論

コラムニストの一覧に戻る

第320回 インターネット大学の全国開放?

2014/03/03

報道によると、文部科学省が現在は構造改革特区だけで認めているインターネット大学の運営を全国で解禁する方針を決めた。インターネット大学はインターネットで遠隔地からでも授業を受けられ、学士の資格も得られる大学である。場所だけではなく、保管されたビデオで受講できるので、時間も問わず、理解できるまで繰り返し受講できるなどの利点がある。職業人が仕事をしながらでも学べる大学である。株式会社で大学として認定されていることで有名なサイバー大学がよく知られている。

ただ、この記事を読んで改めて違和感を持った。インターネットでどこからでも受講できるのに、一定地域だけに認める「構造改革特区」のモデルだったということだ。受講生まで特区の中の居住者に限定するというなら「特区」の意味も分かるが、全国、あるいは全世界のどこからでもインターネットで受講できるのに、何故に「特区」で実験する必要があるのか。

改めて記事を読みなおすと、ソフトバンク系のサイバー大学は、運営する日本サイバー教育研究所の所在地が福岡県となっている。なるほど、どうやら福岡が特区に指定されていたらしい。しかし、教える側の教師も全国、全世界、どこにいてもインターネットで業務が可能だ。もちろん学生の側も、福岡とは無縁のところで受講している。先生がどこにいるのか、サーバーがどこにあるのか、全く意識していない。現に、筆者が知るサイバー大学の教授陣はほとんど福岡にはいない。学生も全国に広がっている。

記事によると「文科省は12年に有識者会議を設けるなどして、ネット大学の全国展開の可否を検討。『学ぶ人の増加が期待できる』として解禁を決めた」とある。さらに「今後は特区以外に運営拠点を置けるようになるため新規参入がしやすく」なる、と文科省は説明しているが、現在でも新規参入の意欲がある企業は福岡に子会社を登記すれば参入できるはずである。そして、教授、学生とも福岡に限定せずに全国、全世界に開放されている。

インターネット大学がサイバー大学以外になかなか広がってゆかないのは、どうも「特区」に限定されてきたのが理由ではないような気がする。もっと根本的なところで魅力を打ち出せる工夫が必要ではないか。全国どこででもできるようになる「全国開放」は、現状とあまり変わりがなく、そもそも距離や時間に関係なく学べるインターネット大学を「特区」に限定したこと自体が滑稽だったのではないか。インターネット大学の普及は学ぶ機会が増加するので、今後活性化することを期待するが、その方策が「全国開放」では、少し物足りない。

上記のコラム購読のご希望の方は、右記の登録ボタンよりお申込みください。

登録はこちらから