HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第321回 ビットコインの不思議
2014/03/17
インターネットの世界では常識では追いつけない不思議なことが起こる。「取引所」が破たんしたことで騒ぎが大きくなったインターネット上で使用する通貨「ビットコイン」も不思議な創造物である。通常の通貨は現在は国の中央銀行が発行し(かつては信用のある民間の金融機関など)、電子マネーは信用できる運営会社が発行、最近では通貨に近い使い道になってきた「ポイント」も信用している企業が発行している。だれか信用を請け負う機関や企業、組織が存在する。
しかし、ビットコインにはそうした運営会社は存在しない。「暗号貨幣」の一種でスマホやPCで簡単に個人間の決済ができるのだという。偽造は困難。貨幣供給量と発行上限が決まっているそうだ。取引記録は分散データベースで公開されている、というから、裏書で取引記録が確認できる手形のような性格もある。この取引記録があるが、匿名性が高いので麻薬の取引やマネーローンダリングに使われる可能性があって、犯罪の温床になる恐れがある、と問題点を指摘する人もいるのだそうだが、どうも実像がつかめない。
もっと理解できないのは実際の通貨と同様に投機の対象になっていることだ。電子マネーや「ポイント」では投機の対象にならないが、ビットマネーはリアルな通貨との間の交換レートが激しく動くので、値上がり益を得られる。もちろん値下がり損も発生するので、取引所は悪く言えば、一種の賭博場と化している印象がないとは言えない。
否定的な側面ばかり強調したが、新しい意義を見出すこともできる。国家や国に関連づけられる特定の機関に依存しない、しかも、世界中で通じる「グローバルマネー」がインターネットの上に、いつかは誕生しても良いが、その萌芽である、と指摘する人もいる。
実際、欧州通貨危機の際に、自国通貨の価値の暴落に危機感を抱いた人たちが自国通貨をこのビットコインに変えた、ということでビットコイン為替相場が大きく動いたようだ。
結局、ビットコインを支えるのはだれか、というと「ビットコインを信用している人々」である。そもそも通貨というのは、この通貨が利用できると共同の了解を持つ人々の間でしか通用しない。共同体を背景に存在している。ビットコインもこれで取引ができると了解する人々が支える。つまりインターネットの中の同志的結合が生み出したものである。実取引に利用されていれば社会的問題を起こすことも少ないだろう。しかし、問題は投機の場所になったことだ。利を追うだけの人々が参加して、結果として大きな損失を被る人も出現したのだろう。
そう思うと、自分とは縁のない世界だと、少しは安心する。それにしても、インターネットは次々と新しい妖怪を生む不思議な世界だ。ビットコインの不思議は、インターネットの不思議そのものかもしれない。