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第322回 テレワーク、再度のブーム到来

2014/03/31

「テレワーク」が再び注目されてきた。

かつて注目されたきっかけは「省エネルギー・コスト節減の手法の一つ」としてである。日本のように長距離通勤が当たり前となると、そのエネルギー消費もバカにならないし、都心のビジネス街のオフィス賃も多額に上る。通信経費が急速に安くなったので、ということでいろいろな企業で実験を行った。自宅で「在宅勤務」することから始めたが、日本の住居は狭くてお父さんが自宅で仕事をするスペースがない、ということで、郊外の拠点駅の近くに「サテライトオフィス」を設ける実験も行った。

いろいろケース・バイ・ケースで評価があるが、結論を急げば、省エネや経費削減のためのテレワークは不評だった。上司からは「部下の勤務状況が把握できない」、実験参加者からは「孤立感がある」などの深刻な問題点が指摘されて、徐々に実験が消えていった。テレワークの目的がコストカットなど、企業側の都合が表に出たためだろう。

しかし、それでも在宅勤務を取り入れる企業は徐々に増えてきている。最も多いのが「出産や子育て」、あるいは親の「介護」などの事情で、オフィスまで通勤できないために退職や求職を余儀なくされそうになった女性たちのテレワーク希望だった。

いま再びテレワークが浮上してきたのは3つのアングルからだ。

1つは少子高齢化が進行する中で女性の力をもっと活用しなければならない。そのために仕事をする環境を整えなければならないという要請である。前段に記述したように、テレワークによって退職せずに厳しい環境を乗り切ってきた前例はたくさんできてきた。その例を参考にしながら、より仕事を自宅でしやすい条件を整えて、女性の社会参画を拡充する、という国の成長戦略の一環である。

もう1つは生活も大切にして仕事の質も高めるライフ・ワーク・バランスの考え方の浸透である。仕事の仕方の自由度を高めて生活も楽しめる時間を作り出すことだ。オフィスに1年のうちの大半を縛り付けられる生活は異常である。

そして最後は、テレワークを実現するICTの道具が飛躍的に進展していることだ。Web会議システムはこのところ急速にサービス品質を向上させている。データを外部から見られないセキュリティの対策も高度になっている。何よりも自宅にいて、オフィスで仕事をしているのと同等の雰囲気で仕事を進められる。

2011年時点での在宅型テレワーカーは490万人と言われる。「新たな情報通信技術戦略」では、これを 2015年までに700万人とする目標が掲げられている。大量に定年退職した団塊の世代も少し退屈し始めた時期だが、今更、満員電車に揺られての通勤は敬遠するにしても、テレワークならば、社会参画し続けても良いと思うに違いない。テレワーク人口はまだまだ増えそうだ。

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