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第323回 常識はもう古い〜〜超電導直流送電の世界

2014/04/14

超電導を利用して新幹線が超高速で東京から名古屋まで飛んでゆくリニアモーターカー、というのは、いまだに人間業を越えて非効率な挑戦だと危惧しているが、北海道石狩市のデータセンターで計画中の超電導直流送電の実験は未来の「直流社会」を切り開く現実的な挑戦だと、期待を込めて注目している。片や、人間を乗せて、ときどきしか通過しない列車のために長いトンネルを占有するのに対して、超電導ケーブルが大電力を効率的に送電する稼働率の高さは画期的な効用がある。

超電導はある種の金属を冷却してゆくと電気抵抗がゼロになる現象である。こういう状況では低電圧をかけるだけで大電力を通じさせることができる。電気を通すと磁力が発生するので、同じ極の磁力をかけると物体は反発力で浮上するとともに、一定方向への力を受ける。それを推進力として利用すると、線路に接しないので物理的抵抗がなく、高速で移動させることができるというのがリニアモーターカーの仕掛けである。

東京〜名古屋のリニア中央新幹線は、超電導が理論だけのものでなく、実用的な技術であることを証明する、という点では評価できる。なにしろ、乗客を乗せた新幹線車両をレールの上に浮かせて、高速で飛ぶのだから、超電導のパワーの大きさを物語ってくれる。

この超電導の実用化は、超電導状況を作り出すことが、以前に比べて格段に容易になったために実現したものである。かつては超電導はマイナス273度の絶対零度で発生する現象だと言われていたが、その後、液体窒素の沸点よりも高い温度で超電導が起きる高温超電導が確認されて、その利用が容易になった。

石狩市のさくらインターネットのデータセンターで行う実験は、液体窒素を冷却用に使って、超電導を送電に使うという実験である。データセンターから500メートル離れた地点にメガソーラー発電所を建設し、そこで起こした直流電力を超電導回線で効率よくデータセンターに給電する仕組みである。

これはデータセンターへの給電のための実験が本来の目的ではない。交流と直流を変換させる半導体の技術革新で、直流の取り扱いが急速に容易になりつつある。長距離送電は交流が適しているというのが従来の定説だったが、電力回りの技術革新の結果、直流の方が優れているケースが増えてきたらしい。さくらの実験は、中部大学、住友電工、千代田化工などとの共同作業だが、目標は効率的な長距離の超電導直流送電の可能性を確認するものだ。これが確認されれば、現在の交流網よりはるかに電力ロスの少ない送電システムが可能になる。無駄に損失していた電気が減れば、日本は電力不足どころか、電力余剰社会になるかもしれない。電力そのものを輸出できる時代が来るかもしれない。

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