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第325回 責任追及より原因追究

2014/05/12

連休中、久しぶりにテレビを見たが、やはり興味をそそられたのは韓国の客船「セウォル号」沈没事故に関連する報道だった。犠牲者方々やご遺族には哀悼の意を捧げる。まだ、行方不明のままの家族の皆さんの心痛は察するにあまりある。さらに、その後の報道に接すると、船長や船員の救助放棄の利己的行動や海洋警察、政府のあまりにもお粗末な対応、官民癒着による社会構造の歪みなど、問題は多々ある。犠牲者の家族の皆さんの怒りの持って行く先が拡散して、それもまた、同情するにあまりある。

そういう特集番組の中で、1つ、日本と韓国の事件、事故に対する事後対応の違いについてのコメントになるほどと得心が行くものがあった。筆者は必ずしも韓国社会に詳しいわけではないので、得心が行ったのは日韓の違いではなく、一般的な事件、事故への対応姿勢の違いについてで、日本社会の中でも2つの異なる対応がある。

コメンテーターは、韓国では「事件や事故の責任者を追及して個人攻撃によって事を収束させようとする。だから再発するリスクが残る」。これに対して日本では「事件や事故の原因を追究して背後にある体制や構造、規則の問題点を明確にして、その改善をもって収束させる。再発のリスクを減少させてゆく」と指摘する。

日本が言われるような面が多少強いということがあるかもしれないが、韓国で述べられている側面もしばしば見られるので、日韓の差異とは言い切れないが、社会に2通りの対応姿勢があることは肝に銘じなければならない。

ソフトウェア事故の責任論についても同じことが言える。

筆者が会長を務める全国ソフトウェア協同組合連合会では、ソフトウェア開発業務についての契約関係を明確化するとともに、システム開発作業工程に関与、担当した作業者の記録を残してトラブル発生時のトレーサビリティー(追跡可能性)確保を目指す「ITソフトウェア基準法(仮称)」を提案している。一部の強い反対論は「責任は納入者が全面的に取るのだから、個人の作業者の記録を残して責任を追及する必要はない」とするものだった。この反対論に違和感を覚えていたのだが、今回のテレビのコメンテーターの指摘で、違和感の理由が分かった。ITソフトウェア基準法で確保しようとしているトレーサビリティーは、だれの責任かを追及するためのものではなく、トラブルが起きる原因の構造的要因や諸要因を明確にして改善し、トラブルを減らすための資料にするのが狙いである。

原因には個人に帰するものもあるが、体制や構造、組織、管理に帰する問題の方が多い。大規模になった情報システムのトラブルでは個人の責任よりも組織全体の問題点をつぶしてゆくことでリスクを減少させてゆくのが正道である。

悲しい事故から、ソフトウェア開発の問題まで考えは広がった。

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