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第327回 遺伝子情報とどう向き合うのか

2014/06/09

筆者の世代には驚きだが、今の妊婦は一定期間を経ると胎児の遺伝子チェックを受けるようだ。先天性障害がないことを胎児の段階で確かめるわけだが、もし、先天性障害が疑われる結果が出た場合、極めて複雑で深刻な状況に追い込まれる。再検査によって疑いが晴れれば安心だが、疑いが深まるケースも出てくる。授かった生命を大切にすることを心に決めて障害を覚悟で産むのか、否か。

心配したように、障害があった場合には、障害を抱えていばらの道を歩む子供、その人生を一緒に歩む親、ともに、厳しい道のりである。敬服するが、考えるだけで胸が痛む。

遺伝子検査は身近なところまで広がっていることを実感させられるニュースはまだまだたくさん目に触れるようになった。これから生まれてくる子供だけでなく、いろいろな年齢層、いろいろな状況に検査は広がっている。

そうした遺伝子情報の収集と疾病の発症のデータが豊富に蓄積されると特定の疾病と遺伝子情報のパターンに強い関係が認められるものが出てくる。同様に遺伝子情報のパターンと医薬品の効果に差が出てくる現象も発見されるようになる。医薬品開発のプロセスの一部が大きく変わる可能性がある。

遺伝子情報と疾病の間に強い相関があると疑われるケースもずいぶん多くなった。もちろん特定の疾病が、ある遺伝子パターンをもつ人に必ず発症するわけではなく、後天的な要因が重なったときに発症確率が高まるという理解のようである。それでも、遺伝子的に乳がんのリスクが高いと判定された有名女優が乳房を切除してリスクを取り除いた、などのニュースが流れると、遺伝子情報の解析は相当のレベルに達しているのではないか、と推測される。

さて、遺伝子情報の解析が大きく進展しているのは、データ収集の技術が進化するとともに、ビッグデータ処理の技術が高度化しているためである。ただ、ここにおいても、日本の技術進展の後れが目立ち始めている。遺伝子情報の収集について個人情報保護の観点から極めて慎重なためである。

一方で、遺伝子情報を安く解析するというサービスが海外で多数、始まっている。専門家によると、遺伝子情報について不安を感じる人たちが、日本では始まっていないこういうサービスを利用する動きが活発だそうだ。その結果、日本人の遺伝子情報がどんどん海外のサービス業者のデータベースに集積しているそうだ。制約の多い日本では遺伝子データの蓄積が進まない中で積極的に新サービスを展開する海外には日本人の遺伝子データが急速に集積する。医薬品開発のための基礎データは海外に集積され、日本向けの医薬品が日本ではなく、海外のサービス業者のデータベースを基礎に開発される。

どこか変である。ビッグデータ時代、遺伝子情報活用できる時代、ここでも日本は世界から置いてけぼりになりそうだ。もちろん、その原因は日本の過剰に厳しすぎる規制ルールにある。

高度情報時代、日本社会は根本から考え方や制度、仕組みを変える必要に迫られているのではないか。

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