HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第330回 「自治体広報」のオープンデータ化
2014/07/22
「オープンデータ」というと行政の保有するデータを市民や民間が活用できるように公開する、というイメージだが、企業や団体、組織が蓄積しているデータの中にも、市民や民間が活用すれば新しい価値を生み出せるものが大量にあるはずである。米国をはじめとして海外では企業データの公開も盛んである。行政データの公開とともに、企業や団体、社会のあちこちに死蔵されているデータを掘り起こしてゆこうという組織として「一般社団法人 オープン・コーポレイツ・ジャパン(http://www.opencorporates.jp/)」がこの春から活動を始めている。
日本での企業データのオープンデータ化の可能性の検討も始めているが、最初の取り組みとして、要望の大きい「自治体の広報誌」のデータをオープン化する企画を進めている。民間企業データではないが、各方面から要望が強いので、取り組みはじめ、すでに2回目の検討会を、東京・新川にある内田洋行新川本社ビルの地下ホールを借りてこのほど開催した。
この企画の狙いは、こうである。
各地の自治体で紙媒体の広報誌を定期的に発行しているが、「2次利用可能なデジタルデータ」になっていないため、他の自治体でも参考になる情報が入っていても容易に活用することができない。これは「知の共有」「情報の共有」という観点からいえば、はなはだ残念で、もったいない話である。これを2次利用可能な形でオープンデータ化できないか。
もちろん、自治体同士の相互利用だけではない。民間が提供しているサービスに簡単に加工、転載できるならば、民間のサービス側はコンテンツが充実し、自治体側では告知する情報の届け先が拡大して、周知徹底とはいかないにしても、労せずして告知対象が増える効果が得られる。
検討会では、オープンデータの中央官庁の担当官や大学の研究者、オープン化運動の実践家、さらにメディア論の研究者らと自治体で広報業務、オープンデータ関連の実務に携わる横浜市や厚木市、千代田区、中野区など、多数の自治体の担当者、加えて、情報を収集、配信サービスするメディア関係者などが参加して、激しい議論が展開される。
たとえば、イベント情報で提供のメディア側の発表があった。イベント情報を告知、申し込み、チケット販売や集金代行など一連の業務を請け負うPeatix社からの事業説明。自治体広報誌に掲載されている情報を、編集段階のデジタルデータを受ければ、これをインターネットを通じて告知、パソコンやスマホでメール配信し、申し込みなども自動的に受付、参加者の情報管理などを代行する。協賛する地元企業を集めて資金を調達し、自治体側はコスト負担せずに事業のプロモーションすることも可能だ。
その他、民間のベンチャーではいろいろのアイデアが出ていて、自治体の持つデータのオープン化によって地域住民の利便性が大きく向上するチャンスが見て取れる。
抽象的だった「オープン化」が具体的にイメージできるようになった。今後、さらに多くの自治体関係者やベンチャー企業が参加して大きな運動になると予感する。