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第333回 活力生む「個人情報」の正しい活用

2014/09/01

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、その運営する共通ポイント「Tポイント」の利用規約を11月から変更するようだ。会員の個人情報の利用について、これまでの「共同利用」から「第三者提供」に変える。会員が第三者への個人情報の提供を拒否する仕組みも作る、という内容だ。報道では「現在協議されている個人情報保護法の改正案では、個人が特定できないようにするなどプライバシーに配慮した上で情報を第三者に提供することを認めている。改正案に合わせて利用規約の文言などを変更する」(日本経済新聞)などの解説を加えているが、この解説には少し違和感を覚えた。もっと広い視野から、「個人情報」を社会的資源、経済価値を生む資源として、正しく活用するための変更ではないか。

日経新聞の記述にあるように、改定法では、個人が特定されないように匿名化の処置が施されれば、本人の同意の有無に関わらず、第三者に提供することが可能になるといわれている。

たとえば顧客データベースで、正確な生年月日ではなく年代、20万円単位くらいに区分した所得レベル、居住地区のゾーン(上記の郡別のデータなら個人が特定されない匿名データになる)などにデータに幅を持たせれば個人を特定できるデータではなくなる。その属性を持つ顧客層ごとの商品の購買傾向を、他のジャンルの企業の顧客データベースの同様のデータと突き合わせれば、顧客の商品選好のより深い傾向を浮かび上がらせ、新商品の開発の精度が上がる。

現在でも、事前に顧客の同意をとっていればそれは可能である。改定法では、匿名化をすれば、同意の必要はなくなる、と一歩、踏み込むものと思われる。

一方、CCCの規約改正はどうか。その目的が、匿名化してマーケティング情報として利用することなら、改定を待てばよい。CCCがこの時期にわざわざ規約を変える必要はなさそうだ。とすると、規約変更の目的はもっと先のところにあるように思える。むしろ、顧客へのより上質なサービス提供を目標にしているのではないか。「買い物履歴」などの個人データを使ってきめ細かな「個客マーケティング」を展開する際、より幅広い領域から個人データを集めて加工処理すれば、顧客サービスの品質を向上させられる。

きっかけはベネッセ事件だったのではないか。利用者の側が個人情報の他の企業の利用に対して意識が高まっているので、あらかじめ情報の「第三者提供」について明確にし、同意を得ておくことにしたのではないか。アマゾンンのリコメンデーションなど、多くのユーザーは便利だと感心するが、中には、それを嫌う人もいる。顧客情報の集積は、商品提案の品質を高めて、顧客の利便性を向上させるのを目的にしているのだが、逆に感じるユーザーもいる。CCCの規約変更は、顧客の側で「質の高いサービスを受けるために情報の第三者提供を望む」か、「サービスの質は低くても良いから情報は外部に出さないことを望むか」、その選択を顧客に委ねるということではないか。

いろいろな経緯はあるが、現行の「個人情報保護法」は、情報技術・通信技術の発達で情報が容易に収集され、伝搬され、蓄積できる社会になった時、社会や個人にとって安全で、かつ、利便性高く、どのように利用すれば良いのか、という観点から制定されたものである。技術の発展でさまざまな危険が生まれてくるが、その領域の1つが「プライバシー」の侵害だった。「プライバシー」を保護しつつ、どうやって情報を社会や個人の利便性を高めるために活用するか、その仕掛けの1つが個人情報保護法だったのである。

しかし、「プライバシー保護法」にすべきところを「個人情報保護法」としたことが、間違いの生まれる原因となった。個人情報のうち、人に知られたくない部分がプライバシーだが、「個人情報保護法」としたために、人に知らせたい、あるいは知られても構わない種類の個人情報まで、隠すべきだという誤解が生まれた。「プライバシー」は人によって異なるが、「個人情報」は定義すれば画一的に取り扱える。画一的な方が法律に適しているので、日本では法律で取り扱いやすい「個人情報保護」の仕組みにした。その結果、社会全体にとっては適切でない運用が生まれてきてしまった。

人に知られたくない「プライバシー」は流通させてはならない。しかし、当人にとっても社会にとっても役に立つ個人情報は、その流通を過度に規制しては社会の健全な発展を阻害する。「個人情報」も適切に扱えば、社会資源、経済資源として大きな価値を生む。

経験が蓄積できていない新しい状況なので慎重に進めなければならないことが多々あるが、CCCのように、絶えず、仕組みを見直し、活力ある社会へと進むための継続的な改革が重要なのではないか。

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