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第337回 治安維持か、インターネットのプライバシー保護か?

2014/10/27

国の安全を守るために各国の情報機関は合法・違法を問わず、様々な手段を講じて多様な情報を収集しているらしい。インターネットの情報収集もその中では最も重要な手段になる。その一端を暴露したのが元米国情報機関職員エドガー・スノーデンだが、これはインターネットを基礎にサービスを行うIT企業にとってはユーザーの利用にブレーキをかける障害物である。違法な情報収集はもちろん、合法的な捜査手法の部分でも、IT企業のビジネス拡大にとっては大きな脅威である。

このところ、情報機関とIT企業との間で、メールなどの通信傍受についてのせめぎ合いが続いている。スノーデンの暴露以来、インターネットユーザーは、ITサービス企業に対して、情報機関に通信傍受をさせないように要請し、これを受けて、IT企業は、通信の暗号化を強化し、傍受はもちろんのこと、記録を押収された際にも、暗号が解けないように強力なものを開発して使用する動きを進めている。

アップルが最新機種で採用したほか、グーグルもスマート端末などに使う新しいOSの暗号機能を強化し、通信内容を分からないようにする計画だ。

これに対して情報機関の側は、麻薬取引やテロ活動の事前情報を収集するのは、社会の安全、テロの防止などには必要不可欠であると主張し、IT企業が暗号化を強化し、麻薬やテロなどの犯罪者が捜査当局の目を逃れて幅広く活動できる状況を作るのは危険である、と主張し、暗号化強化をけん制している。

「インターネットの中の自由」は、犯罪者や犯罪集団の連絡手段に悪用されれば、リアルな世界での大きな事件につながる。その危険を排除しようと情報機関や治安当局がインターネットの自由に歯止めをかける動きも、社会の安全を守ろうとする側にとっては当然のことになるだろう。インターネット社会を健全に発展させたいと思うインターネットのリーダーたちも、それが麻薬取引グループやテロ集団の犯罪の巣になるのは望んでいないだろう。「自由」と「危険」のバランスをどこでとるか。

翻って日本の実態をみると、野放図といえるほどの自由な空間である。例外は米国のサービスを利用する時で、この際は、日本のユーザーも情報収集の対象になっている。

サイバーセキュリティーはこれまで以上に、急速に、大きな問題に発展する。暗号機能強化もその問題の一部として議論が及んでくるだろう。情報社会が安定するまでには、まだ、さまざまなことを考えてゆかなければならない。

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