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第344回 農業を3次産業にする「遠隔栽培農業」

2015/02/02

テレコムサービス協会(是枝信彦会長)が設立20周年を記念して催した「ビジネスモデルコンクール」の審査委員長を務めさせてもらった。昨年秋から今年にかけて行われた全国各ブロックの予選を勝ち抜いた19のモデルについて最終選考を先日、東京で開催したが、いくつかの優秀なモデルの中で、筆者は愛媛県から参加した「遠隔栽培農業」のプレゼンテーションに興味をもった。新しい農業の形の1つになるかもしれない。

「遠隔農業」と聞くと、ロボットなどの機械を農場において、農家がパソコンなどの端末を操作するような未来農業を思い浮かべてしまう。しかし、愛媛県松山市に本拠を置くテレファーム社(遠藤忍社長)の「遠隔栽培農業」のサービスはもっと人力を使う、人間的なモデルである。

テレファーム社は、休耕地などの農地を確保し、有機栽培用の畑として整備する。この農地を、インターネットを通じて、都市の消費者に貸し出し、消費者は借り受けた畑で希望する野菜の栽培をテレファーム社に依頼する。テレファーム社が準備した農作業者が野菜を育成して収穫し、消費者に送り届ける、という仕組みである。収穫物はWEBのショップで一般の消費者に販売することも可能である。栽培途中はWEBで生育状況を点検し、農作業についての指示の機会もある。農業に対する理解を深めることができる。栽培履歴もしっかり把握できる。高いレベルのトレーサビリティーの提供だ。

土地レンタル料金、種子の購入費、送料などを含める、スーパーなどで安売りの野菜を買うのに比べれば多少、高目に感じるが、有機栽培の農作物としては少し安く手に入るかもしれない。割高になるが、顔の見える農作業者に委託して、安全な有機栽培の農作物を届けてもらえる。

このモデルは、消費者が「農作物」を買うのではなく、「農作業」を買うのである。

農業の側では、作物を生産・販売する1次産業を、農作業をサービスする3次産業に進化させるビジネスモデルになる。天候や相場に左右される「農産物」は農家の収入を不安定にし、農業人口の減少の理由にもなっている。付加価値の高い有機作物を収入の安定する委託栽培で運営することで収入を安定させることによって、農業への人口流入を増加させるのがモデルの目標の1つである。

情報技術はコンピューターによって人を減らす合理化にも効果を発揮するが、逆にICT利用の遠隔栽培農業は、作業する人員を農地に集める「地域活性化」の効果をもたらす。ICT利用は人を増やすこともできるのである。

筆者も、さっそく、登録して試すことにする。

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