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第349回 マイナンバーの基盤〜〜住基ネット全自治体で接続完了

2015/04/13

2002年のスタート以来、12年余を経て、ようやく住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)が完成した。3月末、最後まで接続を拒否していた福島県矢祭町は住民情報を収容したパソコンを住基ネットに接続した。16年1月からスタートするマイナンバーの運用には、住基ネットへの接続が不可欠だということで今回の措置になったという。マイナンバー制スタートへの準備が整いつつある。

住基ネットは氏名、生年月日、住所、性別の4情報を使って、行政事務の効率化や行政サービスを利用する住民の利便性を高める仕組みだが、これについて「個人情報保護」や「プライバシー保護」の面で危険がある、として、いくつかの地方自治体で接続を拒否する事態が生じた。しかし、長野県がネットワーク侵入技術を持つ専門家を国内外から招へいして実験した結果、試験期間をたびたび延長しても最終的に外部のネットワークからの侵入ができなかったことが明らかになった。各種の検討委員会でも、住基ネットの外部からの侵入の危険性はほとんどないという結論も出て、「接続拒否」の自治体も次々と接続を開始した。

また、裁判で争ったケースも、最高裁判所で決着がついた。最高裁は「住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない」として、このうち4情報は、「人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報」であると判断し、個人の内面に関わるような「秘匿性の高い情報とはいえない」と判断している。つまり住基ネットで扱う4情報は直接的には「プライバシー情報」には相当しない、として、住基ネット接続拒否の自治体の主張を退けた。

この結果、矢祭町を除く全自治体が住基ネットを利用してきたが、3月末で矢祭町も含む全自治体の接続となった。

あまり意識されないが、住基ネットは行政事務の効率化、住民の利便性の向上にたいへん役立っている。

国の行政機関に対しては年金支給事務や司法試験の実施などに際しての本人確認情報を提供していて、その数は年間5億6000万件に及ぶという。地方公共団体に対してはパスポートの発給、税務事務などの本人確認情報を提供している。年間690万件にのぼる。

その結果、パスポートの受給申請や免許証の申請などで必要としていた住民票の写しが省略され(年間490万件)、住民は一々、住民票を取りに窓口に出向く必要がなくなった。年金関連では、受給者の住所変更届、死亡届の提出が省略され(年間200万件)、年金受給者の「現況届の提出」を省略できる。

公共団体や自治体窓口の職員の作業負担も削減できた効果も大きいが、たとえば年金受給者の現況確認でのコスト削減効果も大きい。郵便物で行うと年に1回、100円としても40億円の郵送料がかかる。死去による支給停止の精度を上げるには年4回程度の現況届の提出が望まれるが、それだと年間160億円の郵送料がかかる。それがなくなった。また、住基ネットでは、死亡届が提出されたら、時間をおかずに金機関に情報が行くので、それ以前のような受給資格失効の確認遅れによる過誤の過剰支給が防げるようになった。確認遅れによる過誤支給を仮に平均5万円として年に200万人で計算すると1000億円。半分が返還請求に応じるとしても、500億円は過誤で支払ったままになってしまう。それが防げるだけでも住基ネットの効果は大きい。

マイナンバーはこうしたメリットの上に数々の効用が新たに生まれることが期待できる。

国際的に後れを取った日本の電子行政、電子社会が、大きく前進してゆく基礎が整いつつある。

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