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第360回 マイナンバーのメリットの確認

2015/09/14

また、マイナンバーの話題で恐縮だが、9月3日にマイナンバー改正案が参議院を通過し、成立したので、もう一度、ポイントを絞って考えたい。

マイナンバーは、国際的に大きく出遅れた日本の電子社会を前進させるため、その基礎をなす「共通番号」を設けて、情報通信技術を駆使した電子社会、とりわけ弱点になっている電子行政の仕組みを構築するというのが目的の一つである。また、税や社会保障での公平な負担や支給の公平性を求めて行く、ということが挙げられているが、マイナンバー反対のグループの主張では「国民のメリットがない」ということになる。

マイナンバーを推進する政府側の反論は、4日の日本経済新聞が報道した。

消費税を10%に上げた際、食品についてマイナンバーカードを提示すると、「軽減ポイント」が記録され、後に、そのポイントを銀行口座に振り込ませる、という軽減税案である。日経報道ではマイナンバーで個人の所得が把握できるので、低所得層を選別して給付金を支給する、としているが、7日以降の各紙の報道では、給付金の対象を低所得者に限定するか全国民に広げるか、年末までに結論を出す、としている。メリットをどの範囲まで広げるかという議論だが、マイナンバーでできることの一つは明確に示されたといえるだろう。

同じ日の毎日新聞に、医療費抑制を目的に始めたメタボ健診が、受診者のデータと診療報酬明細書(レセプト)のデータがマッチングできず、メタボ健診の医療費抑制効果を実証できない、という状況になっていると報じた。年度によって違うが、ある年度はマッチングできたのは20%程度しかないという惨憺たる有様である。

原因は、医療分野で利用できる共通番号がないことである。医療機関の患者の名前がある医療機関では漢字で、別の機関はカタカナである、という状態だという。漢字をコード化し、カタカナをコード化すると全く別のコードで、同一人物とは扱えない。

そこで共通番号が必要なのである。政府のマイナンバー推進グループは、その共通番号をマイナンバーにするように要請したが、医師会に後押しされた厚生労働省がマイナンバーとは別の独自の「医療番号」を主張し、結局、政府は「医療番号」で了承した。ただ、医療番号は必要に応じてマイナンバーに連結できることも決まったので、マイナンバーの価値は変わらない。政府側の目標は達成できたといえるだろう。

この記事では、直接、マイナンバーや医療番号に触れているわけではないが、裏側で、医療分野は共通番号がないのでメタボ健診のデータが十分に活用できない欠陥ができたと主張しているわけだ。医療分野の共通番号制移行への強い思いが現れた記事だった。

しかし、まだ、マイナンバーがもたらすメリットはたくさんあるはずだ。あえて贅沢を言えば、マイナンバーのメリット、もっと提示してほしいものである。

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