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第373回 Uberが日本社会にもたらしたもの

2016/03/14

インターネットを利用した自動車配車サービス「Uber(ウーバー)」が米国を中心に世界各地で急速に広がってきた。日本でも台数限定でトライアルサービスを行った後、都内で「タクシー配車」のサービスが始まっている。利用者は携帯番号や支払い方法などを予め登録しておくが、スマホなどでリクエストするとサービスの側で位置情報を検知して最短時間で到達する車両が迎えに来る仕組みだ。

迎えに来る車のナンバーや運転者の情報も予め知らせてくる。運転者、乗客の双方について安心できる状況をサービスの側で提供してくれる。忘れ物をするなどのトラブルも面倒なく解決できる。利用客にとっては短時間で迎えに来るメリットが最も大きいが、そのほか、運賃の見積もりや地域間の定額サービスなど、不安を除く仕組みを充実させている。運転士や利用客の評価など相互に評価する仕組みの採用で、サービスの質の向上も期待できる。

世界的にはタクシー以外の一般ドライバーの活用が注目されている。過疎地域で、タクシーなどの利用交通機関が少ないところでは、地域住民の「足」として、一般ドライバーと利用客をマッチングさせる手段となってきた。専門のタクシー運転手でなく、一般の運転手をドライバーとして登録、有償のサービスを提供することになる。インターネットならではの交換市場の創出である。

日本では「白タク」として禁じられてきたが、タクシーが採算に合わない地方など、特定の地域では認めるべきだという要望も強くなっている。世界的には一般ドライバーのUberへの登録を認める国が増えてきている。

ただ、どこの国でも専門のタクシー運転手には資格獲得のために厳しいテストや研修があって、経費をかけて運転手になっている。そのサービスにコストをかけていない一般の運転手が競合として参入してくることには反対が強い。先日はUberに反対して、パリではタクシー業界のストライキやデモが展開されて軋轢が表面化している。

カーナビの機能の充実や走行の安全性を高める制御技術の発展などで、専門運転手と一般ドライバーの能力の差は縮まっている。情報技術の進展が「専門家」の壁を崩す事例の一つである。

もちろん、一挙にタクシー運転手の職場が失われることは混乱を招くが、時代の趨勢はそちらに動くことも間違いはない。移行期間を準備しながら、新しいサービスの形態を作り出してゆく知恵も必要になる。情報通信技術の発達で、従来のビジネス、サービスの仕組みが根本から変えられようとしている、という厳しい現実から目をそらすことはできない。Uberが日本社会にもたらしている問題提起を真正面から受け止めなければなるまい。

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