HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第376回 災害時に分かるITやドローンの可能性
2016/04/25
熊本地震の犠牲者の皆さんには心から哀悼の意を表します。また、不自由な生活を送られている被災者の皆さんには、気を強く持って逆境を克服してゆくことをお祈りします。
石垣が崩れ、瓦が崩落した無残な熊本城、4階、5階がグニャリと曲がった宇土市役所、前のめりに倒壊した阿蘇神社楼門と拝殿ーこれらも哀れだが、もっと辛いのは、多数の民家の倒壊で、目を覆うばかりである。大津波に目を奪われた東日本大震災とは、少し違った光景である。屋根の重さだ。東北地方と違い、台風の大風に備えて重い瓦を載せた屋根は激しい地震動に耐えられず、家屋を押しつぶした。
奇跡的だったのは、屋外にいち早く逃れて無事だった住民の方の数が多かったことである。不自由な避難所や自家用車の中での生活は早く終わることを祈るばかりだが、その避難所で不足している物資をツイッターなどのSNSで発信するというのは、IT社会にすでに定着した手法だと実感する。IT社会の新しい姿だ。
「メディア」という観点でも、驚きがあった。
東日本大震災では、一般住民がスマホ(携帯電話)のカメラ機能を使って、押し寄せる恐ろしい津波を迫力ある映像記録として残した。今回も、スマホで撮影した画像や映像がネットに上げられているが、直下型の突然の激しい揺れで、スマホで撮影するいとまがなかったのだろう、災害の瞬間を捉えた映像について、一般住民の投稿はそれほど多くはなかったような気がする。
ただ、地震動が一時的に収まったところで街中や被災した建物を動画で撮影した投稿映像では、現場の惨状をいち早く外部に届ける印象的なものが増えてきた。放送局などのメディアより早く、また大量の情報が一般住民の手によってネットに報告された。インターネットの広がりの上に、スマホや携帯電話の出現で、無数の「報道マン」が誕生し、多様な情報がインターネットを通じて発信されるようになった。新しいメディアの時代である。
今回は、さらに新しいITの道具の登場を予感させる報道があった。ドローンである。大きな山体の崩壊で阿蘇大橋をも飲み込んだ驚きの土砂崩れの現場をドローンが撮影した。報道機関のヘリコプターの映像で外観の映像は見ていた。しかし、ドローンは土砂崩れの表面に接近して撮影した、詳細な映像を送ってきた。
これまでの撮影手段では不可能だった貴重な映像が入手できる。
しかし、それはドローン利用の序の口である。
道路網が寸断された中で、避難所で不足している物資を空から輸送する道具になることも考えられる。大型の物資は難しいが、医薬品や医療器具などの軽量で高機能の資材の搬送に威力を発揮するだろう。ヘリコプターより安価で、大量に運用できるので、運搬する総量は圧倒的に増加するだろう。
現段階では無理だろうが、いろいろなセンサーが開発されれば、捜索にも使えるようになるかもしれない。地中に埋もれた物体の形状を音波や電波などで検出できるようになれば、人間が近寄れない斜面などでも捜索ができるようになるだろう。
新しいものには慎重で、ドローンについてもマイナスの側面を強調して、採用に慎重な論議もないではない。しかし、緊急時には慎重論も影をひそめる。災害時にどこまで有効に活用できるかを実証し、慎重論者の疑念を解いてもらいたい。
改善すべき点はまだ、多々あるが、リスクも承知しながら、災害対策をきっかけに、新しい道具であるドローンの利用方法について、いろいろな挑戦をしてもらいたい。