HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第377回 透明化進める情報・通信技術〜パナマ文書から読み取ること

U+(ユープラス)

U+のTOPへ

寄論・暴論

コラムニストの一覧に戻る

第377回 透明化進める情報・通信技術〜パナマ文書から読み取ること

2016/05/09

21世紀の情報通信技術が「正邪」の価値観の大幅な変更を要求しつつある。

この1カ月の間に起きた最も歴史に残る事件は「パナマ文書」流出である。一種の内部告発だろう。世界の富豪や企業が「節税」のためにタックスヘイブン(税金回避地)を利用した膨大なデータが、パナマの弁護士事務所からドイツのメディアに送られた。その資料に信ぴょう性があると判断されたため、世界的なジャーナリスト網を使って資料の解明作業が進められている。その一部が公表されて、世界各地の有力な政治家の家族や知人の名前が多数、浮かび上がっている。

情報・通信技術の威力である。紙の文書のままなら、解明に数十年、いや、数百年かかるかもしれない。しかし、デジタル情報に変換してあるので、世界の要人やその家族、関係者とのデータマッチングの検証作業は数カ月ないし数年で可能になった。コンピューターによる「検索」機能は想像を絶する力を発揮する。

現在の法体系では、タックスヘイブンは合法的な「節税」の部分が多いと言われている。しかし、それは法律が現状に適応できていない、という指摘がある。タックスヘイブンが貧富の格差拡大を助長するものとなっている、としてタックスヘイブンを利用すること自体を違法にしようという主張も出始めている。

パナマ文書の解析を通じて、富裕層や企業が本来なら納めるべき税金を納めずに済ませる不公平を助長していることが明らかになれば、こうした税逃れができないように法律を変えることになろう。法律を改めれば「合法」も「違法」に変わる。「正当な行為」は「邪悪な行為」に変わる。「節税」は「脱税」に変わるのである。正邪の価値の転換である。

同様の価値の転換は時代の大きな潮流になっている。

スイスの銀行は顧客の秘密を絶対に守るということで長い間、信用を得て来た。しかし、マフィアやテロの活動を助長するということで、米国が先頭を切って犯罪に関与していると疑われる情報の開示を銀行に強く要求し、とうとう、一部の情報は開示されることになった。スイスの法律では合法だが、米国の法律では違法だということで、開示しなければスイスの銀行の支店を米国から追放する、と、通告されたため、スイスの銀行も屈したと言われる。

日本のマイナンバー制度でも、個人の収入や財産が従来に比べて容易に税務当局に捕捉されるようになる。違法な脱税行為は難しくなる。情報化社会が進展するということは、透明性が高くなるということだ。

「パナマ文書」の流出そのものに情報・通信技術がどれほど作用しているか分からないが、その後の解析、解明は情報・通信技術の力の発揮しどころである。法律を変え、価値観を変える大きな変革が進展しそうな気がする。

上記のコラム購読のご希望の方は、右記の登録ボタンよりお申込みください。

登録はこちらから