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第381回 ウィンドウズ10の戸惑い

2016/07/04

無料でのアップグレードの期限、7月29日を前にして従来のウィンドウズ利用者の間で戸惑いと怒りの声が広がった。マイクロソフトから無料のアップグレードを勧めるメッセージが画面に現れる。今回は時間がないので見送ろうと思ってそのメッセージの窓を終了するために右上のXのマークをクリックする。通常は、メッセージを終了する動作だ。ところが、ウィンドウズ10へのアップグレードを勧めるこのメッセージでは、通常と異なって、このXはダウンロードをスタートさせるボタンになっている。終了させようと思ったのに、「勝手にダウンロードを始めた」と利用者は慌てることになる。

さらに、ウィンドウズ10に対応していないソフトや機器、ネットでのサービスが利用できなくなる、という重大な事態に陥る利用者が多数、出て来た。さっきまで使っていたパソコンが使えなくなる、という深刻な事態だ。ネット通販などに生活スタイルを変えていた利用者は日常生活に支障を来す。

利用者は、当人の意志に反して、いわば強制的にウィンドウズ10にアップグレードされたことになる。意志に反した事態が起きたので利用者はあわててしまう。まずは対処策を求めて戸惑い、あちらこちらに電話をして問い合わせるが、利用する環境ごとに解決法は違うので、どこに訊いても満足できる答えは返って来ない。対応策をあきらめて、この際だから、古いパソコンを新しいものに買い替えた、という利用者の声も聞こえる。

とうとう、消費者相談窓口に苦情を訴える利用者が増加した。これを受けて消費者庁はウィンドウズ10に対してホームページで利用者に注意を喚起するところまで発展している。

消費者の反発を予測しながら強制的なアップグレードの作戦に乗り出したのは、マイクロソフト社のビジネスモデルの転換がある。パソコン1台1台にOSを載せて収入を得るという「売り切り型」のビジネスは、アップルやグーグル打ち出した「クラウド上のOSを無料で利用させる」というサービス方式に浸食されて来た。マイクロソフトも、クラウド利用の新しいサービスモデルで競争しなければならない。クラウド対応のサービスに転換するために重要な機能をウィンドウズ10に盛り込んだのである。セキュリティも、新しい攻撃の出現に対応して次々に更新する強力な仕組みを備えている。

昨年リリースした時から1年間は無料のアップグレード期間として乗り換えを促したが、利用者の反応はいま一つである。約束した1年間の無料期間の期限は刻々と近づいてくる。便利さが飛躍的に増加したOSなのだから、利用者にとっても「お得」なはず、である。気がつかないならば、強制的にでも「お得」な方に誘導しよう、というのがこれまでの経緯である。

しかし、ビジネスモデルの転換、サービスモデルの転換、といっても、それはベンダー側の事情である。その事情を、利用者に直ちに納得させるのは無理である。現状の利便性で満足している利用者には、「アップグレードの勧め」は余計なおせっかいに映る。しかもアップグレードの後で今まで便利に使っていたソフトや機器の一部が使えなくなる、というのは困る。

成功が大きければ大きいほど、そのモデルからの転換は困難を伴う。現在のマイクロソフトが直面する困難は、かえってウィンドウズの成功がいかに大きなものだったかを証明するものでもある。

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