HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第383回 ここまで来たか? イオンが在宅店長
2016/08/01
「ここまでできるのか」。記事を見て思わずうなった。
小売り流通大手のイオンがこの春、「店長にも在宅勤務を認める人事制度を導入した」というのである。もちろん、条件付きである。新制度は、店長や課長など店舗管理職に対し、「1カ月最大5日の在宅勤務」を認める、というものである。
その方法は「テレワーク」である。「セキュリティー対策をした専用端末を通じ、始業と終業の際に上司に入れる連絡で勤怠を管理。1日の連続勤務時間は8時間までとし、給与などの減額はない」と記事では述べているが、勤怠管理だけが問題ではないだろう。店舗の販売状況、欠品の可能性が出ている商品はないか、補充の注文は適切に行われているか、逆に売れ残りそうな商品の値引き販売はきちんと展開できているか、棚卸しの状況はどなっているか、廃棄する商品は棚から降ろしたか、スタッフの稼働状況は順調に回っているか、状況に合わせた新しい指示を出すタイミングが来ていないか、店長が店にいて端末を見ながらする作業のほとんどは自宅に置いた端末で行える。さらに販売計画や報告書作成である。データさえあれば自宅からでも店にいるのと同様に作業ができる。
店長がいなくて本当に在宅で業務遂行は完全か? と問われれば、もちろん、完全ではないだろう。店長が店にいても完全ではないが、やはり店長が店にいない時の方が不完全な点は多い。次席の責任者や他の管理職が店長に問い合わせることなく、自分で判断することも多いそうだ。この結果、管理職者の成長が促される「教育効果」が顕著にみられた、と記事では述べている。確かに、そういうものだろう。
制度導入の直接の効果は、より顕著である。
店長を含めて管理職者の多くは、子供の育児、親の介護の問題を抱えている。そのために「育児離職」「介護離職」に追い込まれていた店長、管理職も少なくなかった。その人たちにとっては、新制度が十分とはいえないまでも、育児や介護と業務の「両立」ができる見通しがついてきた。
常識では店長や管路職者は在宅勤務は無理に思える。しかし、実際にやり始めればできそうな感じである。最初は試行錯誤、無理な点も出て来るだろうが、問題がはっきりすれば解決策も見えてくる。「テレワーク」が言われて久しいが、海外ではとっくに実現しているのに、日本ではなかなか進まないのがこれまでの現実だが、どうやら必要に迫られて、思い切って新しい制度を試みる大手企業も出始めた。
「働き方改革」――情報インフラの整備で、いろいろ工夫する余地が生まれてきたようである。