HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第386回 ネットが生み出す新たな「高齢者ビジネス」
2016/09/20
インターネットとスマホによる情報交換・情報共有で、新しいマッチングサービスが誕生している。日本では規制の関係で海外ほどには市場が開けていないが、新しいタイプの自動車配車サービス(Uber=ウーバー)や空き部屋を旅行者に提供する宿舎予約サービス(Airbnb=エアービーアンドビー)などが、業者でない人々にビジネスの機会を提供している。日本でも一部に抵抗があるものの、宿舎予約サービスの方は、ホテル・旅館不足の地域で容認する動きが広がっている。
Airbnbについては、とりわけシニアに大きな機会がもたらされている、という調査結果が出ているようだ。高齢社会研究の第一人者である村田裕之さんのニュースレターで興味深い調査が紹介されていた。
Airbnbは自宅の空き室を提供する「ホスト」と宿泊を希望する「ゲスト」をネットで仲介するサービスだ。同社が空き室を提供する「ホスト」について調査した結果、国内では60歳以上のホストが急増し、約900人が登録している。そのうち60%は男性だが、女性も40%いる。その36%が退職者か無職である。年代層別でホストの増加率が最も高いのが60歳以上の層だが、高齢層ほど増加率が大きい顕著な特色があるそうだ。
60歳以上の高齢層では「自宅空き部屋」の提供が70%で、他の年代層のホストに比べて比率が高い。子育てを卒業して空き室が出てそれを有効に使う、というほか、配偶者と死別して独り暮らしになってホストに登録する、といった例が目立つという。
インターネットを使った仲介サービスでは、利用した後、ホストはゲスト、ゲストはホストについて評価点を付けて、優良な(逆に問題がある)ホスト、優良な(あるいは問題がある)ゲストなどを見分けて双方の質が良くなるように対応策を講じるのが特色だが、ホストに対する評価では60歳以上の層のホストでは7割以上が星5つの最高評価を得ていて、年代層別でトップになっているという。
定年もないビジネス、家族構成の変化で生じた不用の空き室を利用するので、多額な投資をしなくて手軽に始められる、など、確かに高齢者には新たな収入源を提供するサービスである。スマホやパソコンで手軽な宿舎(本格的なホテルなどに比べて低廉な)をネットで探せる便利さで利用者が増えているが、高齢者にとっては、ネットによって、余剰になった資源を活用して現金収入を得られる機会が登場した。
高齢社会にも新しい光が射して来た。