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第389回 マイナンバー収集、個人事業主相手の難問

2016/10/31

今年の1月分の支払いから、企業は「支払調書」や「源泉徴収票」にマイナンバーを付けて税務署に届け出なければならない。今年分の提出期限は来年1月末になる。マイナンバー制度が始まったときには、直接の作業は17年1月だ、などと先の話と思っていたが、気が付けば直近に迫ってきている。

多くの企業は従業員のマイナンバーの収集を着々と進めていると思われるが、なかなか難しいのは、個人を相手に謝礼や報酬を支払っている企業である。たとえば個人の執筆者に仕事を依頼している出版社やコンピューターソフト会社などだ。

筆者も、いろいろな出版社から依頼されて原稿を書いているが、最近は、執筆依頼もメールで来るし、作成した原稿もメールで送信する。顔を合わせないでのやり取りも増えている。気になるのは、こういう場合にマイナンバーの収集はどうなるのか、ということである。いくつかの出版社は代行の会社から連絡があってマイナンバーカードをコピーして必要書類ととともに返送したが、いくつもの出版社や代行会社から要請が来るのは、良い迷惑である。後から連絡がきたところに対する対応はどうしても鈍くなる。

気難しい作家やそもそもマイナンバー制度に反対していたライターなどは、こういう作業はやらないだろう、と想像する。と思っているところに、やはり、出版社やソフト会社がマイナンバー収集に難航している報道があった。

この報道では、国税庁のホームページの記述やマイナンバー問題に詳しい影島広泰弁護士の意見を基に、その対応を紹介している。

どうしてもマイナンバーを取得できない場合は、国税庁では、空欄にして提出することを容認する、ということである。ただし、支払い相手に、マイナンバー提出が義務であることを告知し、提出の督促をしたことを示す文書のコピーなどを添付して、十分な努力をしていることを証明することが必要なのではないか、と述べている。

国税庁の方では、住所、氏名があれば、担当の役所に問い合わせてマイナンバーを調べることができる。ただし、所定の手続きを経なければいけないので、相当の手間である。安易に空欄で提出されると、行政上の大変な無駄が生じるので、これを避けたい。努力を重ねた上に、どうしても取得できなかった、というケースでしか容認したくないだろう。

初めてのことだ。ある程度の混乱や「空欄」の発生は仕方がないだろう。しかし、そもそも無駄の多い高コスト体質の行政事務を効率化してゆくのが制度創設の目的である。スムーズに行くようになんとか工夫をしたい、と思う。

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