HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第393回 便利さの陰に〜〜IoTにひそむリスクにも注意
2016/12/26
便利さを追求することに心血を注いでいると、そこにあるリスクを忘れてしまいがちである。その深刻な例が「IoT」である。
すべてのモノをインターネットにつなげる「IoT」は次の時代の夢の社会を実現するとして熱く語られている。実際に大学や研究機関、産業界が知恵を出し合って猛烈な勢いでIoT社会を目指して走り出している。確かに、気がついてみると、インターネットにつながった機器は街頭の防犯カメラやオフィスの事務機、工場の制御システム、家庭の電気製品など、すでに身の回りにたくさんある。
これらは初歩的なIoT機器である。遠隔地からコントロールできるし、その映像を監視センターで見守り、犯罪が起きた時にはその記録で早期に犯人を割り出して事件解決につながっている。各種機器から集められたデータは、ビッグデータとして解析されて、より高度なサービス提供に利用されてゆく。その成果によって、社会は大きく進化してゆくだろう。
しかし、そのメリットは、リスクと隣り合わせであることを、2つの機関が明らかにしている。
まず、警察庁の発表である。
警察庁によると、ネットにつながっている家庭内のWebカメラや各種家電製品に侵入しようとするサイバー攻撃が夏以降、急増している。サイバー攻撃と見られる不正アクセスは、観測機器のアドレス1カ所に対して10月は1日平均1800回に上ったという。パソコンでは、十分とはいえないまでも、ウイルスソフトを装備するなど、対策を試みることは常識になっている。しかし、IoT機器はほとんどが無防備である。特に街頭の防犯カメラなどは、ウイルスに感染して「乗っ取られ」て、そこから他のシステムを攻撃する「踏み台」にされている恐れがある。
感染した機器の被害だけでなく、他のシステムを攻撃するための道具にされるのである。こうした事態になれば、ウイルスに感染した機器の管理者は、今度は攻撃の共犯者になりかねない。被害者ではなく、加害者になるのである。
また、横浜国立大学大学院の吉岡克成准教授研究室の調査によると、世界中のIoT機器の130万台がウイルスに感染していることが確認されたという。同大学の情報機器を攻撃してくるウイルスなどの発信元を解析してゆくと、IoT機器から攻撃が来ていることがわかる。この方法で国内でも数千台のIoT機器のウイルス感染が確認できたと言う。
攻撃の発信元になっている国も世界各地に分散しているが、16年1月は攻撃を仕掛けてくるIoT機器の数は3万台だったが、10月には133万台と1年足らずの間に40倍以上に増大している。
IoT機器がネットワーク社会の脆弱ポイントになる。この防御対策が急務である。