HOME > U+(ユープラス) > 奇論・暴論 > 第397回 警戒心高まる消費者
2017/02/27
先端技術を駆使して魅力的な商品を開発する――ヒット商品を目指した単純な発想では通じない社会になった。その商品の安全性を確認する項目に「情報流出の有無」が加わった。その対象になった商品が「対話型人形」というアメリカ生まれの玩具である。
報道によると、ドイツ連邦ネットワーク庁はドイツ国内で販売されていた「My Friend Cayla」の使用を禁止したという。カメラやマイク、無線通信装置が内蔵され、インターネットを介して音声認識技術を利用する。同庁は、この機能の組み合わせが「プライバシーを侵害する恐れがある」として、同国の通信関連法に抵触すると判断した。販売店の店頭から商品を撤去するよう要請するとともに、すでに購入している家庭の親に対しては電源を切るように求めているそうだ。
この商品を使って子どもたちが会話を楽しんでいると、その内容が外部から盗聴でき、悪用されれば、プライバシー侵害の危険がある。利用している無線装置には十分なセキュリティー措置が施されていないため、半径10メートル以内では簡単に子どもと人形の間の会話内容を傍受できる、というのである。
子どもの無邪気な会話がプライバシー侵害につながるとは、なかなかイメージしにくいが、民族間、宗教間で紛争が頻発している地域では、子どもの会話から民族や宗教が分かることが安全を脅かす材料になるという危惧があるのだろう。
また、米国ではプライバシー保護団体が、この人形を使って親の承諾を受けずに会話の内容が収集されているとして、苦情の申し立てを行っているという。
社会の変化、時代の移り変わり、価値観の変容などで、ルールは変わってゆく。先端技術は便利さを増進するとともに、新しいリスクも発生させる。人形と子どもが会話する、というのは一面からすると、素晴らしい人形である。子どもの知能の発達を促す、情緒を安定させるプログラムを使って、楽しく学習する道具になるだろう。しかし、単に情報の流出だけでなく、一方的に偏った思想を洗脳してゆく道具にもなる。どのようなプログラムが使われているのか、第三者がチェックできる仕組みが必要だろう。
また、盗聴や傍受について敏感になっている警戒心の高まった消費者を意識して、そうした不安を払しょくするようなセキュリティーも施さなければならない。点検項目がどんどん増加して、自由な発想を阻害しかねないデメリットがあるが、先端技術が暴走して技術そのものへの否定へと発展しないためには、開発側で様々な角度からチェックをしてゆかなければならないだろう。