HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話  > 第144回 償還払いで居宅サービスを利用せざるを得ないケースが増えてくる

U+(ユープラス)

U+のTOPへ

mssaの介護・福祉よもやま話

コラムニストの一覧に戻る

第144回 償還払いで居宅サービスを利用せざるを得ないケースが増えてくる

2024/04/22

介護保険制度の居宅サービスを利用するにあたって、居宅サービス計画(ケアプラン)が、作成されていないとサービス利用できないと、考えている人が少なくない。それと同時に、あたかも居宅サービス計画が、サービス利用(保険給付)の条件であるかのような、行政指導をしているケースも見受けられる。例えば、ある地域包括支援センターは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員に対して、緊急的なサービス利用のケースであったとしても、サービス利用の前に必ず担当者会議を開催して、目標の設定をしなければならない、という指導を行っていたケースがある。

しかし、その考え方は二つの点で間違っている。

一つには、老企22号解釈通知の規定である。「利用者の課題分析(第6号)から、担当者に対する個別サービス計画の提出依頼(第12号)に掲げる一連の業務については、1条の2に掲げる基本方針を、達成するために必要となる業務を列記したものであり、基本的にはプロセスに応じて進めるべきものであるが、緊急的なサービス利用等やむを得ない場合や、効果的・効率的に行うことを、前提とするものであれば、業務の順序について拘束するものではない。ただし、その場合にあっても、それぞれ位置づけられた個々の業務は、事後的に可及的速やかに実施し、その結果に基づいて、必要に応じて居宅サービス計画を見直すなど、適切に対応しなければならない。」とされているからだ。

6号から12号とされているのは、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十八号)の第十三条のことであり、9号に規定されているサービス担当者会議も、手順前後して良いことになっているので、実際のサービス提供の後になることもあり得るのだ。

二つには、そもそも居宅サービス計画は、保険給付の条件ではないということだ。

介護保険法では居宅サービス計画は、償還払いサービスを、現物給付化する手段と規定されているために、利用者がサービス利用時に、費用全額を居宅サービス事業者に支払い、後日市町村から自己負担分を除いた金額の払い戻しを受けるという、償還払いで利用する場合は、居宅サービス計画は必要ないのである。利用者が最初から、償還払いでサービスを受けても良いとするなら、居宅サービス計画のないサービス利用を、介護事業者は拒むことはできないのである。その場合は、居宅サービス利用の目標なんて、最初から最後まで存在しないということになる。

よって目標がないことをもって、「サービス利用できない」という解釈は、まったく根拠に欠ける、思い込みでしかないということになる。この点をすべての介護関係者が理解しておく必要がある。なぜなら今後は、やむにやまれず償還払いで、サービス利用せざるを得ないケースが増えてくるからだ。

北海道の郡部などの一部地域では、居宅ケアマネージャーが足りない、もしくは、いない地域が出現している。その為、近隣市町の居宅介護支援事業所に、居宅サービス計画の作成を依頼するケースが増えている。しかし、それにも限界があり、やむを得ず市町村職員が、利用者にアドバイスして、セルフプランでサービス利用し、現物給付化している現状があるが、いずれそれも、できなくなる地域が出てくるだろう。その時には、利用者に償還払いの承諾を得て、プランなしでサービス利用してもらわざるを得ない、ケースが必ず出てくる。居宅ケアマネージャーが足りない地域で、ケアプランも作成できない人は、そうしないと介護保険サービスと、結びつくことができないからである。

それに備えて、居宅サービス事業所にも、「居宅サービス計画なし=保険給付されない」ではなく、「居宅サービス計画なし=償還払いでサービス利用」という法令ルールを、理解していてもらいたい。緊急やむを得ないケースで、市町村から居宅サービス計画がない、償還払い利用の依頼があったとき、「償還払いって何?」・「償還払いの場合、どのような手続きを踏めばよいの?」なんて恥ずかしいことを、言っていられないのである。

そうしないと、地域の福祉レベルを護ることができない事情が、日本のそこかしこに、生まれつつある危機的状況を、理解せねばならない。

上記のコラム購読のご希望の方は、右記の登録ボタンよりお申込みください。

登録はこちらから