HOME > U+(ユープラス) > 電子自治体の行政情報化ニュース > 自治体IT革命の今日、明日 第204回 「公共サービス改革とICT、その4『足立区、窓口業務の民間委託』」
2017/09/04
24節気の「立秋」も過ぎ、暑さがおさまるという意味の「処暑」(“日中は暑いものの、朝晩の涼しさに初秋の息遣いを感じる頃です。”)も過ぎました。暦の上では秋です。如何お過ごしでしょうか。
(前回より)
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○公共サービス改革法(平成18年7月施行)
・意義
・地方公共団体が実施する官民競争入札又は民間競争入札
○「公共サービス改革法」改定
・24の窓口関連業務 ・・・ 現在は25業務です。(注)
(注)(25)特別永住許可等の申請、住居地等の届出及び特別永住許可書等の交付
(平成27年6月4日 新設)
○「窓口の多様化」とは
“顧客(住民)との接点の場”という意味で、以下のチャネルが考えられる。
・組織
・代行組織・代行機能
・情報伝達手段
・インタラクティブ(双方向)手段
○「窓口サービス」とは
1.各種相談・問合せ機能
2.各種申請・届出の受付機能
3.各種証明書の発行機能
4.苦情の受付機能
5.意見・要望の収集・活用機能
6.(意見・要望の)対応機能
主たる上位4つのサービスの提供チャネルについて。
○窓口サービスと提供チャネル
10年前です。平成17年初めの地方自治体(市区町村)導入比率は、以下の通りである。
1.各種相談・問合せ機能
専門相談窓口の設置 35%
電話での相談 27%
ホームページに窓口一覧、FAQ掲載 50%
携帯サイトに窓口一覧、FAQ掲載 少
メール、FAXでの個別対応 65%
他
2.各種申請・届出の受付機能
電話・FAXでの申請受付 20%
郵送による受付/受渡し 90%
インターネットによる申請受付 35%
申請書のダウンロード 50%
3.各種証明書の発行機能
郵送による受渡し (90%)
コンビニなどでの受渡し 12%
自動交付機 16%
4.苦情の受付機能
ホームページに受付掲載など 35%
携帯サイト 5%
苦情の処理手続き公開 7%
○コンビニ交付サービス
「窓口のワンストップサービス、『コンビニ交付が始まる!』」
・2010年のことです。市川市、渋谷区、三鷹市がスタートしました。
現在は、マイナンバーカード利用のコンビニ交付サービスが開始されております。
○J-LISのコンビニ交付サイト
https://www.j-lis.go.jp/rdd/card/convinikoufu/cms_93097920214.html
○業務改革モデルプロジェクト、窓口業務改革の取組み(総務省 16/06)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei04_02000045.html
高山市、鳥取市、西予市、別府市、南城市など。
○業務改革モデルプロジェクト事業委託予定団体一覧(総務省 17/06)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000488046.pdf
北海道北見市、千葉県船橋市、滋賀県彦根市、滋賀県草津市、大阪府河内長野市、福岡県須恵町、熊本県宇城市。
◎地方公共団体の窓口業務における適正な民間委託に関するガイドライン
http://www.soumu.go.jp/main_content/000441007.pdf
平成28年12月14日
総務省行政管理局公共サービス改革推進室
以下ガイドラインの概要です。
○民間委託における課題
窓口業務の民間委託に当たっては、依然として様々な課題が指摘されている。
具体的には、
・法令上、委託が可能な業務と行政が自ら執行すべき業務の切り分けについて業務ごと、地方公共団体ごとに試行錯誤しながら整理している実態があること
・窓口業務のノウハウが職員個人に蓄積され、組織的・体系的に共有されていない場合や、作業手順や運用等が自治体ごとに異なる場合など、民間事業者の参入障壁となっていること、わゆる偽装請負の問題が懸念されることなどが挙げられる。
○窓口業務の民間委託に関する各府省庁通知
http://www.soumu.go.jp/main_content/000442600.pdf
・窓口25業務
新たに、「特別永住許可等の申請、住居地等の届出及び特別永住許可書等の交付」追加
市町村の出張所・連絡所等における窓口業務に関する官民競争入札又は民間競争入札等により民間事業者に委託することが可能な業務の範囲等について
(平成27年6月4日)
○労働関係法に留意した適正な請負・業務委託について
・昭和61年労働省告示第37号。以下「37号告示」
市区町村職員が、受託者である民間事業者の労働者を指揮命令の下で業務処理を行わせたと認められる場合には、契約形態にかかわらず実質的に労働者派遣法の労働者派遣に該当する(いわゆる「偽装請負」)。
この場合、当該契約に係る事業を行っている民間事業者(派遣元)は、労働者派遣事業の許可が必要となるなど派遣元事業主として、市区町村は派遣先として、労働者派遣法の規制を受けることとなる。
・窓口業務における留意事項
窓口業務の民間委託をする際には、労働者派遣に該当しない態様によって委託の契約を締結し、遂行しなければならない。
(1)適正な民間委託のための業務の設定
・自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材又は材料若しくは資材により、業務を処理すること、
・自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること(37号告示2条2項ハ)。
(2)明確な業務範囲の設定
(3)十分な能力を有する民間事業者の選定
(4)事業の始期における引継ぎ
(5)官民職員の執務スペースの区分
(6)業務遂行中の職員の関与
○個人情報保護
(1)委託の導入に係る審査及び承認手続き
(2)事業者の選定基準
以下の事項を調査し、事業者の安全性、信頼性等を確認し、事業者を選定すること。
・ 経営の健全性、安定性、営業規模、営業地域等
・ 業務完遂能力、要員の技術力、教育体制等
・ 個人情報保護措置及びセキュリティ確保の措置の実施状況等
・ 損害賠償のための財務力
・ 社会的信用をき損する行為の有無等
・ セキュリティ管理システムに係る国際規格の認証取得状況等(推奨)
(3)遵守事項の説明
(4)責任体制の明確化
(5)安全性および信頼性を確保するための措置
(6)システム端末の管理
(7)書類、データ等の適切な管理
○公共サービス改革法34条特例に基づく民間委託について
公共サービス改革法34条においては、一定の条件の下、5つの窓口業務について、職員が常駐しない態様による民間委託が実施できることとしている。
具体的には地方公共団体の出張所、公民館等の公共施設のほか、コンビニエンスストア、ショッピングセンター等の民間施設内に窓口を設置することも可能である。
・委託可能範囲は「交付の請求の受付」および「証明書等の引渡し」に限定されるものであり、交付審査および端末操作は本庁等の職員が自ら実施すること。
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(以上)
今回は、足立区における「窓口業務の民間委託」についてです。窓口の多様化そして窓口サービスについておさらいをしてみます。
○「窓口の多様化」とは
“顧客(市民)との接点の場”という意味で、以下のチャネルが考えられる。
・組織
1.庁舎内窓口 旧来の組織
2.土・日・祭日の開庁 サービス時間の拡大
3.総合窓口 ワンストップサービス対応
・代行組織・代行機能
4.コンビニなど代行機関 サービスの場の拡大
5.自動交付機、電子ロッカー 場と時間の拡大
・情報伝達手段
6.電話・ファックス・郵便 旧来の伝達手段
7.インターネット PC、携帯電話など
・インタラクティブ(双方向)手段
8.会議室・掲示板・M/L、SNS・ブログなど
○「窓口サービス」とは
以下の6つの機能を持っていることが必要と考えられる。
1.各種相談・問合せ機能
2.各種申請・届出の受付機能
3.各種証明書の発行機能
4.苦情の受付機能
5.意見・要望の収集・活用機能
6.(意見・要望の)対応機能
この窓口サービス実現には、窓口とバックヤードとの連携が必要であり、手段としてICT利活用から避けて通れない。
◎東京都足立区
http://www.city.adachi.tokyo.jp/
偽装請負として社会問題化した足立区窓口の民間委託について。
公共サービス改革条例は全国で最初の事例となりました。個人情報保護条例の改正と特定委託業務調査委員会の設置、業務の履行状況の確認のための評価委員会の設置など様々の対応をしてきました。
・足立区における公共サービス改革の推進に関する条例
http://www.city.adachi.tokyo.jp/reiki/418901010058000000MH/418901010058000000MH/418901010058000000MH.html
・足立区個人情報保護条例
http://www.city.adachi.tokyo.jp/reiki/405901010057000000MH/405901010057000000MH/405901010057000000MH.html
・足立区特定委託業務調査委員会設置条例
http://www.city.adachi.tokyo.jp/reiki/426901010039000000MH/426901010039000000MH/426901010039000000MH.html
◎足立区、「戸籍・住民票等証明窓口業務の民間委託」
○背景・取組内容
・足立区では給食調理、廃棄物処理等の単純定型業務の委託や指定管理者制度を実施済。
・次のステップとして、専門的ではあるが、定型的な業務を繰り返す「専門定型業務」の民間委託を模索。
・平成26年1月から戸籍・住民票等証明窓口を民間委託
(2期目:平成28年4月〜平成33年5月)。
○実現までの問題と解決策
問題
1.公権力の行使・偽装請負、
2.個人情報保護対策、
3.業務の履行状況の確認
解決策
1.2期目の契約に向け、労働関連法令等の遵守を評価の視点に入れ、事業者選定を実施。
2.個人情報保護条例の改正により罰則を強化(受託者の従事者も含む)。また、弁護士、特定社会保険労務士で構成された第三者機関「特定委託業務調査委員会」が、民間委託後の業務において個人情報が適正に扱われているかを評価。
3.外部委員(庁内委員、弁護士、公認会計士)で構成された委員会を所管内に設置。業務履行状況の評価結果が低い点等は、要望事項として事業者に通知して改善内容を再点検。
○効果
コスト面
・年間約2,500万円のコストメリット。
委託したサービスを仮に区職員が担うとした場合の職員人件費(試算)と現行委託費とを比較すると、委託した方が1億3千万円程度安くなる(5年2ヶ月間の累計)。
サービス向上
・受付窓口を8窓口から16窓口に、番号発券機を1台から2台に増設。
・フロアマネージャーの体制強化。(1名(3時間/日)ー>委託後3名(常時))
・予測待ち時間を常に表示。待ち時間、処理時間計測と定期的評価による事務改善の推進。
○今後の課題(制度上の課題)
・業務に習熟した事業者が少ない公共サービス分野における適切な実施方法の検討
現状では、一定程度の技術や知識の移譲が必要であり、「偽装請負」に当たらない形での自治体職員と受託者の迅速な意図伝達が可能となれば、効率的な業務運営につながる。
・国から示されている民間事業者への委託可能な業務範囲の見直し
実務に鑑みて、取扱い範囲を拡大することができれば、効率的な業務運営につながる。
平成29年08月31日