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第297回 日本産業の変容〜〜円安にどう対応するのか

2013/04/15

為替というのは素人には相変わらず、分かりにくい。

円安というのは日本経済が相対的に信用できない、ということで人気がなくなった結果、というのが、為替が変動相場に移行したころの説明だった。日本経済が強いので、1ドル360円の交換レートは急速に円高に移行し、40年以上を経て、一時期は70円台を記録する高水準の円高となった。日本経済の強さを表す慶賀すべき状況かと思えば、そうではない。昨年末、安倍首相に交代して円安が進み、ついに1ドル100円の水準まで来たが、日本経済が弱くなったと嘆く向きは少ない。むしろ、経済界は大歓迎である。

円安を歓迎する理由の一つが、日本製造業の空洞化が回避の方向へと向かうことだ。日本の主要製造業は、円高で国内生産では国際競争力がなくなったとして、海外に生産拠点を移した。国内の雇用が失われ、地方経済は惨憺たる有様。若者も正規の職に就けずに、日本の国力は次第に衰退の一途である。1ドル90円台、さらに80円台、70円台と進行するに従って、国内では持ちこたえられなくなった事業が徐々に海外に引っ越して、ますます、国内は空洞化を進めていた。

それが、1ドル100円の水準に戻って、海外への生産拠点の移管にブレーキがかかってきた。報道によれば、日産自動車をはじめとした大手メーカーが、海外生産を見直し、一部を日本にUターンさせることを検討し始めたらしい。1ドル80円が100円になれば、海外生産のコストは25%も上昇したことになる。ここまで変動すれば、国内でも採算がとれる事業が目立つようになるだろう。製造業の国内回帰も拡大する可能性がある。

もちろん、円高のダメージもいずれ表面化してくる。食料、エネルギーなどの大半を海外に依存している日本社会は、20%以上の輸入コストアップで、すでに一部の商品の値上げが始まっている。火力への依存を増やした電力料金にも跳ね返っているし、食品の値上げも目白押しである。収入が伸びない時にインフレは困る。やはり円安というのは、日本経済を弱くしているのか、と実感させられる。

つまりは、輸出産業、輸入産業、それぞれの立場によって、為替についての価値評価が異なる、というだけのことなのだが、日本社会の当面の課題が、デフレ克服、雇用の拡大ということであるなら、とりあえずは輸入産業に泣いてもらい、輸出産業の体力回復を急いでもらうべきなのだろう。雇用が回復し、所得が増えてゆけば、インフレも乗り切れることになるだろう。

しかし、日常の実態が変わらなくても、自分ではコントロールできない為替の変動で、収入も、雇用も、生活環境もがらりと、変えさせられる。為替に振り回されるのも、ひどく疲れる。国際化、グローバリゼーションというのも、しんどいものである。

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