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第331回 「失敗プロジェクト」は成功のもと〜〜社長賞再考

2014/08/04

親しい大手出版社の社長から意外な話を聞き、思わず拍手してしまった。

出版業界は代表的な構造不況業種で、根本的な経営の見直しが迫られている。従来の事業の継承では未来がない。これまでの常識は捨てて新しいことに挑戦し、異次元のビジネスを「発明」しなければ、存続すら危ぶまれる。明日の事業に責任をもつ経営者が最も危機意識をもっているのだが、どの業界でも同じように、「創造的破壊」をもたらすような成功事案など、なかなか出てこない。

そこでこの社長が昨年末に経営陣の反対を押し切って断行したのが、昨年1年間をしめくくる「社長表彰」の選考基準の見直しである。

社長が選び出した「社長賞」の対象は、実現性が乏しいと批判されながら新事業に挑戦して、見事に失敗したプロジェクトだった。「成功事例を選んでこそ、表彰制度の意味がある」という強い異論が、「小さな挑戦の成功事例」を推挙してきた事業部門責任者から出てきたが、社長はこれを採用しなかった。

従来路線を継承するような事業で実績を上げても、「それは仕事をしたとは言えない」。従来考えられなかった全く新しい発想で挑戦した事業こそ、「現状から脱皮し、新しい会社を作る」ことになるので、そこに挑戦するならば「それこそ仕事をした」という証明である、というのである。結果が失敗したことをもって「表彰に値しない」というのでは、イノベーションを起こそうという挑戦者は出てこない。イノベーションを目指した失敗者こそ、全社員の模範なのである。

さらに彼は米国のデータなので日本に当てはまるかどうかは分からないが、と前置きして、「米国では社内で新事業を起業すると、成功率はせいぜい20%で、80%は失敗する」と紹介した。ただ、「この失敗者たちが、次に2度目の起業に挑戦すると、今度は成功率が80%になる」のだそうだ。1度目の失敗は大きな意味がある。

しかし、1度失敗すると、あきらめて2度と挑戦しない人がこれまた80%いる。これで社内の飛躍のきっかけがつかめない。「失敗者が2度目の挑戦に取り組む勇気を与える」ということで成功事例を増やせるはずだ。

失敗を恥とせず、挫折感を持たずに次の挑戦に向かう社内風土を育てることで、企業を次の時代の飛躍に導くチャンスを増やすことができるのではないか。

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