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第378回 情報基盤が導く「サービス融合」

2016/05/23

電気(電力)の小売りの全面自由化――4月1日に電力システム改革の本番が始まったが、想像以上にいろいろな業種、業界から有力企業、無名企業さまざまな事業体が新市場に名乗りを上げている。情報システムで顧客管理をすることによって他業種からの参入が簡単になったことも背中を押している。5月現在で名乗りを上げている電気小売り事業会社は290社を超えている。

経済記者だった筆者からみると、直感的に、過剰だと思う。いずれ淘汰が進み、提携、買収、統合などが始まって、集約が進む、とも思えるが、最終的に何社くらいにまとまって、どういう性格のところが生き残るのか、見当がつかない。もしかすると、群雄割拠で、もっと多くの企業が切磋琢磨して共存するかもしれないという考えもよぎる。

資本力があって、優秀なビジネス人材を多数抱えるところが業界の主導権を握る、というのが他の産業での従来の常識だが、電力の小売りにその公式が当てはまるのかどうか、違った要素もある。大企業による集約、という発想は、規模の利益が利く場合に当てはまるし、電力も長い間、規模の利益を享受してきた。水力発電所、火力発電所、原子力発電所と、発電所1つで地域の電力需要を満たし。さらに遠隔地の大都会の需要に応えて、電圧を高めて長距離を搬送する電力システムができてきた。

しかし、電力の自由化は、分散型の小規模発電施設への期待を高まらせている。太陽光、風力、小型水力、バイオマスなど、発電する近隣の地域の需要を満たせれば良いという考えの多数の発電所を生み出している。現在の長距離送電による電力損失は3割以上と言われる。発電する施設の近くで電気を使う「地産地消」でロスを少なくすれば、多少高めの発電コストも送電コストを低減することで取り返せる。

ということで、電力小売りに進出する企業の中には地域密着を競争の決め手にするところも少なくない。

非常に目につくのは、他業種から電力への進出で、さらにその本業のサービスとの「セット割り」で販売し始めたことだ。これまで通信サービスでよくお目にかかった光景だ。ガス会社は電力販売での競争の決め手に、セットで契約すればガスも割安にするプランを提案している。もっと顕著なのは東京近郊の鉄道企業グループの「セット割り」である。このグループの運営するCATVの料金が割安になる。カードポイントに加算される。定期券購入の際にポイントが2倍になる、など、電気を申し込めば、他のサービスでメリットが得られる。

電気の小売りの自由化も、電気だけのサービスではどの会社を選んだ方が得か、メリットの区別がつきにくい。情報通信技術を基盤にした顧客管理データベースによって、別々のサービスが一元化されて、競争は総合力の勝負になる。流通や輸送などの地域密着のサービスに、地域密着性の新しい電気小売りが結びついて、競争は別の次元に突入する。電気の小売り自由化によって他業種から参入してきた新電力のサービスの「セット割り」が続々出現してくると、改めて「サービス融合」の時代が来たことを実感する。

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