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姫路市は、地方中枢拠点都市制度(現在は「連携中枢都市圏構想」)の提唱市でもあり、平成26年には「地方中枢拠点都市」のモデル都市に選定されました。姫路市を核とした播磨圏域では、新たな広域連携モデル構築事業を通じて、以下のことに取り組んでいます。
姫路市では、平成26年に策定した情報システム最適化計画に基づき、仮想化技術で構築された統合基盤を整備し、大型汎用機で稼働している基幹系業務システムを、順次、再構築するシステム最適化に取り組んでいます。この取り組みについて、このプロジェクトのマネージャーである情報政策室田中氏、 原氏にうかがいました。
姫路市では、導入から30年あまりが経過した大型汎用機を利用した基幹系業務システムが稼働し続けていました。長年にわたる開発・運用により業務システムが複雑化し、それによって多くの業務において独自仕様で運用され、今後の運用管理のコストの増大が懸念されていたのです。非オープン環境による運用が、他のオープン系環境との連携の妨げにもなり、業務効率の悪化を招いていました。また、大地震や豪雨による水害などの災害発生時や、設備の障害発生時などの物理的な安全性の向上と、住民情報等の情報セキュリティ面の強化も大きな課題となっていました。さらに、平成28年にはマイナンバー制度運用開始も控えていたため、様々な角度から変革の必要性に迫られていたのです。
そこで、システム複雑化を解消し、将来に渡るコストの適正化を図るために、「情報システム最適化計画」を策定することになりました。すでに策定されていた「姫路市総合計画」が目標とする都市像である「生きがいと魅力ある住みよい都市 姫路」の実現に向け、情報化の側面から住民サービスの向上を具現化すべく、基幹系業務システムの仮想化統合基盤への移行へと動き始めたのです(原氏)。
課題解決に向けて、まずは最適化のベースとなる仮想化統合基盤を構築してハードウェアの集約を図るとともに、管理負荷の軽減や省スペース化、安全性・安定性を確保するために、【①基幹系基盤そのもののランニングコストの削減、②オープン系基幹業務システムの安定稼働性の確保、③住民情報のデータ保全性の向上(セキュリティ対策・BCP対策等)、④自治体クラウドの対応に向けた取り組みの推進】この4つの具体的な改善を念頭に、最適化計画を実行に移しました。(原氏)
①については、どちらの自治体も同じような境遇かと思いますが、長年にわたって汎用機を使用していたため、保守・管理も調達時から同じベンダーと契約しており、いわゆるベンダーロックインの状態になっていました。それにより、電算費用の約4割を占めていた大型汎用機のコストが適正であるかどうかを比較することも困難でした。今回の最適化では、プロポーザル方式でベンダー各社からプランを提案してもらったのですが、大幅なコスト削減が見込めるプランであったことと、姫路市のニーズに合った提案であったことから、内田洋行での調達に至りました(田中氏)。
②③については、最適化において特に重視した点でもあります。基幹系統合基盤は、住民票発行・税・社会保障など、窓口サービスを行うシステムを稼働させる基盤となるので、いかに安全に、安定して確実に動くか、99.9%以上の確実性が求められます。そこで採用したのが、マイクロソフト社のHyper-Vでした。
当初からHyper-Vに決めていた訳ではないのですが、1つの決め手は、サーバ基盤やクライアント基盤のベースがウインドウズであったという点です。Hyper-Vは、同じマイクロソフト社のハイパーバイザー(仮想化技術)なので、親和性が高いと考えたのです。さらに、今後も仮想化技術は進展していくことが予想されるので、その変化に対して、OSレベルでの親和性が高いHyper-Vは、より確実性を高めてくれるものだと考えました。また、内田洋行の提案には、基幹系基盤を構築する以前に既に構築していた情報系・福祉系・教育系基盤がHyper-Vを採用していたので、操作スキルの習得という点も含めて、統一基盤の管理が行いやすいという狙いや、次のステップでのさらなる統合化を視野に入れると、統一的なプラットフォームには大きなメリットがあることが示されており、最適化の観点からも納得できました(原氏)。
④については、播磨圏域連携中枢都市圏の中心都市である姫路市として取り組むべき課題です。近隣の市町では既にオープン系環境を整えている団体もあり、姫路市はオープン化の取組みで遅れをとっていたのです。同じステージに立たないと自治体クラウドの実現は難しいので、今回の整備は次へのステップへとつながるものだと考えています(田中氏)。
姫路市の最適化計画は、平成26年度から5年をかけて、現在大型汎用機で稼働している業務システムをパッケージソフトで再構築し、仮想化統合統合基盤上へ移行する形で進行しています。前述した通り、今回構築した仮想化統合基盤はすべてマイクロソフト社のソリューションで構成されており、仮想サーバ、仮想デスクトップ、ウィルス対策からイベントログ管理、セキュリティパッチ適用、バックアップに至るまで、Hyper-VとSystem Center製品群で構築されています。
約60台の仮想サーバと、250台の仮想PC(SBC方式600台相当も併用)を統合基盤上に集約し、業務サーバからシステム管理のサーバまでを統合的に管理・運用する環境を構築しました。仮想デスクトップの利用は、基幹系端末だけでなく情報系端末からも利用することができ、利用の際には必ずICカードとPINコードによる認証が必要となり、セキュリティを高めています。マイクロソフト社のツールを採用したことで、機能面だけではなくライセンスの有効活用による大幅なコスト削減も見込まれました。内田洋行が同規模の自治体、教育機関や多くの民間企業で仮想化統合基盤の構築実績を持ち、特にマイクロソフト社製品を使った構築と運用を得意としていることも大きなポイントとなりました。そして、約3ヵ月という短い納期での対応をスムーズに実施することができたのです。
災害時や障害などに対する安全面については、外部データセンターに仮想化統合基盤を構築することで強化を図りました。本庁舎が被害を受けて機能が停止してしまった場合でも、データセンターを中心に業務を継続できるようにするためです。また、住民基本台帳システムについては、Hyper-Vレプリカによるディザスターリカバリーという機能を準備し、仮にデータセンターとの回線が切れてしまったとしても、本庁舎に置いているミニ基盤(常時二次バックアップ環境としても利用)で業務が継続できる環境を整えました。基盤構築の機会を利用し、様々なトラブルを想定して、どのような状況にも対応できるように万全なBCP対策をしたかったのです。セキュリティ強化等、当初の計画上では将来の課題とされていた部分も、内田洋行の提案により盛り込むことができました(原氏)。
基幹系基盤の整備の後は、情報系基盤やその他のシステムを含めて再編成が必要だと考えています。サイバー攻撃等から個人情報や重要情報を守るためには、業務システムを外部と分離することが必要である一方、行政手続き方法の多様化を検討する上では、インターネットの活用を無視して住民サービス向上を図るには限界があります。行政分野における情報化の動向をきっちりとキャッチし、業務改革と市民サービス向上の将来ビジョンを描いてICTというツールを効果的に活用できる基盤づくりに取り組むことが重要となります。現在は、マイナポータルやJPKIに注目しており、マイナンバーも含めた住民情報系環境というクローズにしないといけない部分と、ICTを活用したサービス向上を図るオープンにできる部分とを整理したうえで、基盤環境の再編成をしていきたいと考えています。(原氏)
自治体クラウドへの対応においては、まずは基盤の共同利用という形であれば、段階的に進めていけるのではないかと考えています。例えば、姫路市の統合基盤の一部を近隣の市町に提供するなど、姫路市のさらなる最適化を推進するのはもちろんのこと、播磨の中核都市として広域での展開も視野に入れて進めていきたいと考えています。(田中氏)
さらに、マイナンバー整備にあわせて、仮想化統合基盤上で統合データベースの構築も進めています。各業務のデータを中間的に統合データベースに集約し、そこから中間サーバに連携する仕組みは、マルチベンダー環境におけるシステム間データ連携やデータの横断的な活用を可能にします。行政としては、人口減少社会において、より客観的なデータに基づいて効率的、効果的に施策を展開していかなくてはなりません。ICTを活用した地方創生への取り組みも重要となります。ICTが支える技術は、ツールであるとともに行政経営全体を支える仕組みにもなるので、内田洋行には今後も情報提供や新たな提案など、幅広いサポートを期待しています。(原氏)
取材日:2016年2月。掲載内容は取材当時のものです。
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