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第13回 24時間巡回サービスの介護報酬について

2012/09/03

本年4月に、介護保険制度の居宅サービスとして新設された24時間巡回サービスは、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」であり、このサービスが同じく新設された、「複合型サービス」と共に、地域包括ケアシステムの基礎サービスとされている。

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の介護報酬は以下の図1のとおりである。

一体型とは、訪問看護を指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所として提供できる事業者が算定する費用で、この場合、訪問看護が必要ではない利用者は低い方の報酬を、訪問看護を必要とする利用者についてはその費用も含んだ高い報酬を算定するものである。一方、連携型とは、指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業者は、巡回訪問介護サービスのみを提供し、訪問看護サービスについては、外部の訪問看護ステーションと連携して、その部分のサービスを訪問看護ステーションが担うものである。この場合訪問看護を利用する方の当該訪問看護に係る報酬は、連携先の訪問看護ステーションが訪問看護費として算定するものであり、指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、連携型の報酬を算定することになるが、これは一体型の訪問看護を行わない場合の報酬と同額である。

ところで、このサービスは介護給付費分科会の議論の際に、当初から特養の多床室より高い報酬でも良いと主張する委員がいるなど、施設サービスと同程度の介護給付費が設定されるのではないかと予測されていた。しかも報酬の財源をひねり出す手段のひとつは、施設サービスにおける多床室単価を下げることであったことは間違いなく、あの乱暴な引き下げにつながっていった。このサービスは月額定額報酬であり、施設サービス費の日単価設定とは異なるのだが、比較するためにサービスコード表の日割り単価で、特養の多床室単価と比較してみよう。その比較図が以下の図である。

特養は看護サービスもセットで含まれているという意味から、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費も、訪問看護を含めた一体型の高い報酬の日割り単位と比較してみたほうが良いだろう。すると要介護1と2では、特養多床室の方がかなり高いが、要介護3ではその差が縮小し、要介護4では6単位しか特養多床室報酬は高くない。要介護5ではこれが逆転し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費の方が高くなっている。

もともと定期巡回・随時対応型訪問介護看護費は在宅重中度者の地域での生活を支えるという目的があり、あり方委員会の中間報告書では、利用対象者を「要介護3以上としてはどうか」という記述もあったが、要介護者の介護サービスを利用する権利との整合性が取れず、利用対象者は要介護者全てとしたものの、介護給付費で要介護1と2の額を抑え、実質、要介護3以上の在宅者にサービス提供が受け易い誘導策をとっていると想像できる。

しかしこの報酬設定額はどう考えてもおかしい。特養の多床室報酬と比べて、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費は高すぎると言いたい。なぜなら定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは、あくまで居宅サービスであるから、訪問介護と訪問看護に係る業務の費用しか含まれていないため、身体介護に使う様々な物品の費用は利用者負担であり、例えばおむつ交換が必要な利用者のオムツ代金や、清拭に使うペーパーその他の費用はすべて利用者負担で、事業者負担することはない。しかも居宅サービスは、趣味・娯楽のサービスを含まないから、それに対する支出もない。

それに対し施設サービスは、日常生活に必要な車椅子等の介護用品や、オムツや清拭用品、レクリエーションや通院支援費、その他諸々の費用を全て含んでいるとして、施設がそれらの費用を支払う必要がある。趣味や娯楽サービスの費用も全部含んでいるとして、レクリエーションや行事やクラブ活動等の費用を「教養娯楽費」として支出せねば運営基準違反となる。

このように圧倒的に支出費用が少ない居宅サービスの介護報酬が、施設サービスと同程度であるというのはおかしいのである。さらに言えば施設サービスは、すべて施設職員により身体介護をはじめとした全サービスがまかなうものだが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は24時間地域を巡回すると言っても、それぞれの要介護者の主介護者は、ほとんどの場合、「家族」であり、重度要介護者は定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスだけで在宅で生活が続けられるわけではない。それなのに要介護5の費用が逆転し、特養の多床室より、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の方が高いのはおかしいのである。

支出費用から考えると、特養等、施設サービスの介護報酬は定期巡回・随時対応型訪問介護看護の報酬よりもっと高くなければならないし、施設サービス費が現在の額が適正というなら、逆に定期巡回・随時対応型訪問介護看護費はもっと低い報酬を設定すべきである。今になって老施協は「新サービスは「高コストで非効率」で、地域包括ケアシステムは机上の制度だ」と言っているが、「高コストで非効率」であるということを報酬改定議論の場で、具体的に説明主張しないで、大幅な引き下げが行われたあとに文句だけ言っても始まらないだろう。しかし3年後に向けて、もう一度施設サービス費を適正価格にしていくためには、新サービスの報酬がなぜ高すぎるのか、ということを市民に向けてもきちんと説明し、前述したような様々な費用が含まれる施設サービス費の水準は、居宅サービスとは比較にならないほど支出すべき費用が多いのだから、その水準を見直すべきだと主張していく必要はあるだろう。

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