HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話  > 第14回 消費税引き上げが介護サービス事業者に与える影響

U+(ユープラス)

U+のTOPへ

mssaの介護・福祉よもやま話

コラムニストの一覧に戻る

第14回 消費税引き上げが介護サービス事業者に与える影響

2012/10/01

次期介護報酬改定は、2015年度の予定であるから現在の介護報酬は2012年度、2013年度、2014年度の3年間に適用されることになる。

そうなると一番の問題は、2014年から予定されている消費税率の引き上げ分をどうするのかということである。消費税率は2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げられる予定である。勿論、消費税引き上げという問題は、国民一人ひとりに関わってくる問題で、特に「逆進性」の影響を受ける年金生活者など高齢者個人の問題としても様々な影響が考えられるが、介護施設や介護事業者にとっても深刻な問題である。

非課税法人である社会福祉法人であっても、施設等の運営に必要な物品購入費用の消費税が免除されるわけではなく、介護施設等の運営経費は消費税がアップした分がそのまま上乗せされてアップされてしまうわけである。いわゆる「損税」という問題である。しかも介護保険施設は、医療機関の外来部門のように、出来高で収益を別に得られるような構造になっておらず、入所定員に応じた上限のある報酬の中で運営している。その報酬も2012年改訂で大きく減額され、経営が厳しい状況になっているにも関わらず、現在の報酬額と同じ報酬の中で運営せねばならない。2014年に、消費税だけがアップされ、運営コストが大幅に上がってしまうのは大変な問題である。

消費税率の引き上げは、介護保険制度が始まってからは行われていなかったので、介護保険関連事業者にとって、それははじめて経験することであり、消費税アップ分を顧客である利用者に転嫁できない状況で、今後に対する経営不安を持っている経営者・管理者の方が多いだろうと想像する。介護給付費はこのアップ分を見てくれるのであろうか?9/7に開催された「社会保障審議会介護給付費分科会・介護事業経営調査委員会」で、消費税の引き上げに対する対応についての審議が始まった。来夏ごろに中間整理を行い、来年中には消費税の取り扱いをまとめるとしている。この中で厚労省は「現場に混乱をきたさないよう、医療との整合性は重要」とし、過去に消費税引き上げを経験した医療保険給付との整合性をとることを説明している。そこで過去の消費税と診療報酬の関連を調べてみると、消費税(税率3%)が導入された1989年と、税率を5%に引き上げた1997年の各診療報酬改定時に、損税分をそれぞれ0.76%、0.77%上乗せし、このことにより厚労省は問題解決できたとしている。

今回の介護事業経営調査委員会においては、「介護サービスは人件費率が高く、物件費は医療より低い」などとして、消費税引き上げの影響は、医療機関のそれより少ないかのような意見が出されている。この意見がそのまま通れば、過去の診療報酬の税のアップに対応した引き上げ率よりアップ率が高くなることは望めないという結論になる。そう言う意味では非常に厳しい状況であると言わざるを得ない。仮に、税率アップ分を診療報酬がアップされた際の状況と整合性をとってアップがあったとしても、例えば施設の建て替えや修繕に伴う費用に対する消費税負担は考慮されておらず、建設・修繕コストなどは自前で確保しておかねばならない。当然のことながらこの部分には「内部留保」と表現され、変な批判対象となっている「繰越金」が重要な資金になってくるわけで、借入金だけで施設を建て替えることなど、ますます困難となってくることは目に見えている。なんとか消費税アップの実費分はきちんと運営コストとして上乗せしてもらわねば経営状況はさらに厳しくなるだろう。この部分は来年中に結論が出されるまで注目していかねばならないし、きちんと現場の意見を届ける方法を考えていかねばならないだろう。

ところで、仮に消費税アップ分が報酬に反映されるのであれば、それはどのタイミングで、どのような形になるのか?2014年の消費税アップ分を、翌年の介護報酬見直しまで対応しないということでは困るので、場合によっては、2014年に8%にアップした分の上乗せ、翌2015年は通常の報酬改定で、その際に税率が10%にアップした分と合わせて改定ということになるのだろうか?しかしそうなると、消費税のアップ分を上乗せしたことを隠れ蓑にして、基本報酬のアップが抑制される可能性があり、ますます厳しい状況が考えられる。しかも請求ソフトや、それに連動した給付管理ソフトなど、コンピューターソフトの更新費用も1回分余計にかかることになり、支出経費はその分も増えそうである。

上記のコラム購読のご希望の方は、右記の登録ボタンよりお申込みください。

登録はこちらから