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第32回 介護福祉士になりたい人を増やす政策が必要だと思う

2014/03/31

全国各地の介護福祉士養成校のホームページやフェイスブックをみると、「就職率100%」を前面に出して入学者を募集しているところが数多くみられる。しかし事実として言えば、介護福祉士養成校は、看護師養成校やセラピスト養成校などより圧倒的に人気がなく、入学応募者が少ないことから養成校の数も減少傾向にある。このことは介護現場の人材不足の大きな要因でもある。つまり就職率100%という事実は、介護福祉士の資格を得て、介護の職業に就こうという動機づけには結びついていないということである。

介護業界での人材不足・人員不足はますます深刻化しており、異業種からの転職者も無条件で求められているような情勢であり、介護福祉士という国家資格取得者の就職先がないなんてことはあり得ないのである。むしろ仕事があるということが前提で、その仕事でどれだけの報酬が得ることができるのかということの方が問題なのだ。そのことに対する不安や疑問が、介護福祉士養成校の不人気さに現われているということが言えるだろう。

それは、介護を一生の仕事にして、倹しくとも家族を養って暮らしていけるのかということが問題となっているのだということだ。しかし事実として言えば、当施設で介護福祉士として入職し、長く仕事を続けてくれれば家族を養って暮らしていけるだけの報酬は得られると言ってよい。

具体的に言えば、当施設の新卒者募集条件は、給与142,800円〜313,156円(経験年数を勘案するために幅がある)、賞与・年2回 合計4.5ケ月分、住宅手当、扶養手当、寒冷地手当、特殊業務手当(基本給の16%を加算)、交通費支給 社保完備 昇給あり、これに福祉医療機構から引き継いで、支給額の高い北海道民間社会福祉共済会の退職金制度も完備しており、条件としては悪くはないと思う。しかし当法人のように、給料表や共済制度が完備されている事業者のみならず、給料表もなく、経営者の時々の判断で定期昇給額が決められ、退職金制度もない事業者もあり、仮に退職金制度があったとしても支給額の非常に低い民間退職金制度のみの事業者も多い。そのため将来の見込みが立たないとして中途退職し、職場を転々と変えて、スキルがアップしていかないという人も存在する。

介護福祉士養成校は、生徒募集では苦戦しているが、就職という面から言えば、売り手市場で、現場から求められる立場であるのだから、単に学生を就職させるだけではなく、就職先の給与を含めた待遇格差にもっと敏感になって、将来設計の立てられる就職先を斡旋し、その実績で高校の就職担当教員や高校卒業者等にアピールしていくべきではないのだろうか。

ところで給与格差という問題は、経営体力という面から大きな差が出る部分であり、ケア単位は小規模化しても、ケアサービス事業を経営する主体は、複数の事業者が乱立するより、ある程度の規模を持った大きな法人組織が統合化され、多様なサービスを提供していく中で、給与等の待遇を向上させていくという視点も必要とされるであろう。そういう意味では、社会福祉法人の合併と統合を進め、サービスを多角化していくという考え方は間違った方向ではない。さらに介護施設の現状から言えば、対利用者比3:1の看護・介護職員配置基準では、実際には求められるサービスが提供できず、多くの介護施設は2:1の配置で対応している。しかしこの配置職員をすべて正規職員として雇用できる介護報酬体系とはなっていないため、非正規職員として雇用・配置されている職員がかなりの数に昇る。当施設でも、それらの職員がいないと運営に支障を来す状態であるが、雇用形態が多様化するということは、それだけ同じ仕事をしている人の待遇格差が生ずるということであり、それが介護事業者ごとの待遇格差の拡大に繋がっていく一要素となっている。

介護保険制度以前と以後では、介護職員として就業する人の数は倍以上になっているのだから、これらの人々の待遇を向上していくことは、経済対策としても有効である。デフレ脱却の方向から考えると、今後ますます必要とされる介護職員の給与をアップすることで、世の中のものが売れるという流れが生まれ、景気がよくなることに繋がり、経済効果も高まると思える。同時にそのことは介護人材確保にもつながり、一石二鳥ではないのだろうか。そういった面から考えれば、配置基準を2:1とし、それに見合った介護報酬に再編していくという考え方も必要である。非正規職員を雇用しなくともサービス提供が可能な報酬が必要ではないかという議論もされてよいと思う。

介護報酬のアップは、財源を圧迫させるという視点でしか語られないが、これだけ多くの介護サービス関係者がいて、その求められる数はますます増え続けることを考えると、財源となる税金を支払う人々という側面からの視点があってよいだろう。それは消費者として一定規模のカテゴリーとして分類できる数の職種であるのだから、財源となる企業の税金収入を増やすための、購買意欲につながる一般市民の懐具合という面からの考え方でもある。

そうであれば介護職員の処遇改善が継続できるよう、介護報酬改定により対応するということは経済対策としても有効で、超高齢社会のニーズとともに、総合的な視点を鑑みれば必要不可欠であろうと思えるのである。介護報酬改定と、経済対策を切り離して考えることの方が的外れだと思うのである。

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