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第59回 介護ロボットの導入に対する加算ついて考える

2016/07/19

平成30年度の介護報酬改定は、診療報酬とのダブル改定という状況で行われる。過去のダブル改定では、厳しい財源事情を理由に、社会保障費の伸びを抑制しようとする中で、少ないパイを介護と医療が奪い合う結果に終わっている。その中でほとんど介護が医療に負け続けているという状況に思われるが、ミクロ部分では両者痛み分けに終わるということもあったわけで、マクロな視点から、両者が手を携えて国民のセーフティネットを護るという観点から、協力関係を築いて、足並みをそろえて物申すことが出来ないのだろうかと考えたりする。そもそも介護事業者は、医療機関が母体になっている事業者も多いのだから、介護だけ、医療だけという観点で結果が出されて良いはずがないのであるが・・・。

ところで介護報酬改定議論では、居宅サービスの部分が先行議論され、施設サービス費についてはほとんど議論が進んでいないが、10日に政府は、介護ロボットを導入することで介護職員の負担軽減やサービスの質向上を実現する介護施設に対し、介護報酬を加算する方針を明らかにした。もともと加算とは、サービス事業のサービスの品質向上を目的に、現行のスタンダードよりハードルが高い条件をクリアした際に算定できる費用という意味で、いわばアウトカム評価に結びつくものであるはずだ。しかし、この加算は機器の導入費用の補助という意味合いが強く、しかもそれは国の新産業育成対策であり、経済政策としての意味合いが強い。そうであれば、こうした費用は、介護保険を財源とした介護報酬の加算ではなく、国の補助金で対策すべきではないのだろうか。

そもそも介護ロボットが、人手不足を補うほどの性能なのかということは大いに疑問で、少なくともそのようなエビデンスは存在していない。かなり以前から介護現場に導入されている、「移乗用リフト」にしても、使いこなせずに倉庫の奥深くにしまいこんでいる施設もあるし、もっとも操作が簡単な機器といえる、「電動ベッド」にしても操作ミスによる介護事故が毎年起きている現状を考えると、介護ロボットの導入で介護サービスの現場における省力化が劇的に進むとは考えられない。

介護現場にロボットを導入して得られる改善効果の検証・データ化作業は、厚生労働省と経済産業省が連携し、29年度までの実施を計画しているというが、政府として介護ロボットの導入推進策がまずありきの中での、身内による検証作業のどこに客観性なり、信頼性があると言うのだろうか。それは、お手盛りシャンシャンのアリバイ作りでしかない。経産省は今後、ロボットの価格が下がり、介護報酬の加算などの政策でロボットの施設への導入が進めば、「単純労働をロボットが、複雑な仕事を人間が行う分業化が始まる」と分析しているが、介護労働のどこに、人が介入しなくて良い単純作業が存在するというのだろうか。介護者職員もずいぶん馬鹿にされたものだ。

もちろん、介護ロボットの性能が向上し、もっと安価に介護現場にそれを導入できて、使いこなす職員が増えて、人手がかからなくなるに越したことはないが、開発企業や国が考えるほど、介護業務を減らす効果は期待できないし、使えない、使いこなせないというのが現状理解である。どちらにしても、このロボットを必要としない介護サービスの場の、基本報酬が減らされて、介護ロボットに頼らざるを得ない施設に、その分の費用が、加算として回されるのは、少しおかしくないだろうか。

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