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第75回 プラス改定と言われる次期介護報酬の実態

2017/11/27

平成30年度から介護報酬改定について、政府は人手不足による人件費増などで介護保険サービス事業所の経営が悪化していることに対応するために引き上げる方向で検討に入った。ただし保険料負担の増加を抑えるために報酬の引き上げ幅は小幅とし、サービス内容ごとの重点化・効率化を徹底する方針とのことである。そうなるとプラス分は事業者の収益にはならない人件費支出分(おそらく処遇改善加算の引き上げ分のみプラス)となり、引き上げられるのは加算報酬のみで、各サービスごとの基本サービス費は、引き下げられるという可能性が高い。

つまり介護職員処遇改善加算以外の、事業者の収入部分の報酬はマイナスとなる可能性が高く、これは平成24年の報酬改定と同様のプラス改定構造であり、介護事業経営はますます厳しい状況に陥ることになる。昨年度の介護経営実態調査で収益率が1.6%まで下がった特養の報酬も、処遇改善加算を除いてプラス改定となる見込みもなく、いよいよ特養の経営破綻という事態が現実味を帯びてくる。

また各種報道では、経営実態調査で訪問介護と通所介護(デイサービス)は利益率が高いことから、この適正化を図るというような記事が目につくが、それより収益率が高い通所リハビリなどはやり玉に挙がってこない。それはリハビリテーションが重視されているからなのか、医療業界が介護業界より力があるからなのか?一体どちらなのだろうか・・・。

どちらにしても新たに創設される短時間の講習受講者で提供できることになる訪問介護の生活援助は大幅な報酬減額などが予測される。そういう意味では、国のデーターや審議は、すべて報酬削減ありきのアリバイ作りに思えてならない。

そんな中、11/8(水)、第150回社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、通所介護、療養通所介護、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、訪問看護、看護小規模多機能型居宅介護、居宅療養管理指導について、2巡目の審議で、次期報酬改定の論点が整理された。

そのうちマイナス改定が確実な通所介護費については、スケールメリットが働き、一人当たりのコストが低下して収益率が高いとされる大規模事業者(月751人以上の利用者がある事業者)について報酬の削減案が示されている。だからといってこの削減額を、小規模事業所に回すのではなく、報酬を手厚くするのは機能訓練に関する新たな加算である。その内容は外部の医療機関、通所リハビリ、訪問リハビリ等の理学療法士等のリハビリ専門職と、通所介護事業者が協働して個別機能訓練計画を立案した場合や、リハ専門職と連携して個別機能訓練計画の進捗状況の確認を行い、必要な計画の見直しを行う際に加算評価するというものだ。これによって小規模事業者も、自前でリハビリ専門職を雇用せずに、新たな加算を算定出来て収益をアップさせることができるということのようだが、外部のリハビリ専門職がボランティアで協働してくれるわけもなく、その経費を考えれば、この加算で挙げられる収益で経営改善するのは、期待薄ではないだろうか。

また現在、3〜5、5〜7、7〜9という風に、2時間ごとに設定しているサービス提供時間について、それを細分化し、3〜4、4〜5、5〜6、6〜7、7〜8、8〜9と1時間ごとに見直す案が示されている。これは明らかに報酬減額を見込んだもので、例えば7〜9の中で、最短時間でこの報酬を算定している事業者は新たな7〜8報酬で、基本サービス費が減らされることになる。

延長加算の単位引き上げは、ニーズが低く長時間サービスへのインセンティブ付けには懸念が示されたことによって今回は見送られる。要するに単純なレスパイトケアは報酬を減らす方針と延長サービスの単価引き上げは矛盾するので、それは行わないという意味だろう。

どちらにしても通所介護は、さらに厳しい報酬減額の波にのまれる。特養と通所介護事業を中心にしてサービス提供している社会福祉法人は、いよいよ正念場である。経営の抜本見直しを行わないと、次の3年間は単年度赤字が続き、繰越金が枯渇し、経営ができなくなる法人が多数出かねない。

それにしても収益率が高いとされたら報酬を減額するというのであれば、逆に収益率の低いサービスは報酬を上げないとならないはずだ。そうしないことには経営として成り立たない。それでは介護サービス自体が消滅してしまう。老施協をはじめとした職能団体は、もっと大きな反論の声を挙げねば職能団体としての体を失ってしまうのではないだろうか?

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