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第96回 介護の場でのボランティア活動に物申す

2019/08/26

連日ワイドショー等で取り上げられている、「芸人」の裏営業問題・・・。その問題の本質は、裏営業と呼ばれる直営業問題ではなく、反社会勢力とのつながりの問題であり、事実を嘘で隠そうとした倫理上の問題なんだろう。

それはどうでもよいとして・・・所属事務所から「謹慎処分」を受け、活動自粛をやむなくされた芸人の一部が、介護事業者でボランティア活動をしながら、「反省の姿勢」を見せていることが報道され始めている。

芸人だとて、その身分より先に一個人としての存在があるのは当然だから、ボランティア精神を抱いて、介護サービスの場で様々な活動を行うことは問題ないし、むしろそのことは歓迎されてよいことだと思う。本当の意味でボランティア精神を発揮できる場として、介護施設等で、「できること」をすることに対して批判する何ものもない。また活動を自粛している間に、自分の手に職をつけようとして、「介護」の勉強をしようとする動機づけはあってよいと思う。その結果、将来介護の担い手の一人として活躍してくれる人が、一人でも多くなることは社会的にも意義があることだろうと思う。

しかし・・・である。連日の報道内容を見ていると、芸人が招待を受けて活動した場の主催者が、反社会勢力であるということはとは知らなかったとはいえ、そういう場で営業し収入を得ていたことについて、反社会勢力の人の被害を受けた方々の感情を考慮して、その反省と贖罪の気持ちを込めて、介護の場でボランティア活動に励んでいるとされている。

いい加減にしてほしい。介護の場は誰かの贖罪の場ではないし、介護という行為は、「罰」ではない。介護労働は、対人援助という行為を支える専門技術であるし、介護の仕事は、他の仕事に比して特別な位置にあるものではなく、ごく普通の社会活動である。そうであるにもかかわらず、所属事務所等から処分を受けた芸人が、介護ボランティアをしながら反省して、活動再開に備えているということになれば、介護サービスの場を罪人が懲役刑を受けている場とイメージする人がたくさん出てくる。活動できない芸人が簡単にできる労働として、「底辺労働」のイメージも生まれてこようというものだ。

そもそも一芸人が介護事業者等でボランティアをしていることが、どうしてこんなに話題になるんだ?、何らかの形でそれをマスコミにリークしているという証拠ではないか。僕は今、フリーランスの立場なので、自分の時間を使って様々なボランティア活動を行っているが、そんなことは業界関係者にさえ漏れていない。活動する場所にいる人しか知らないことだ。

本来ボランティアとは奉仕なのだから、無償の行為である。それはその活動で金銭を得ないというだけにとどまらず、名誉さえ得ない行為であるべきで、奉仕によって名が売れることは最も恐れられるべきことで、避けるべきことなのだ。芸人が本当の意味で反省と贖罪の気持ちを込めて、社会に貢献できる活動の一つとして、介護サービスの場におけるボランティア活動をしているなら、そのことをマスコミに報道させるなと言いたい。知られてもそれを公表しないように頼めと言いたい。そうした活動を、誰からも顧みられない状態で黙々と続けてみろと言いたい。そうしていないということは、何らかの意図があると勘繰られてもしょうがないし、こんな風に世間に介護ボランティアをしていることが喧伝されているという事実は、その行為の実態が「売名行為」であるという疑いを持たれても仕方がないと思う。そうした売名行為に介護労働が利用されて、社会の底辺労働のイメージが広がっていくのは迷惑である。

介護の場は、芸人の「悔悟の場」ではないのだ。マスコミはもっと、介護労働とはどのようなものかということを勉強してもらいたい。そして心してもらいたいことがある。ボランティアを安易に、「崇高な行為」と祭り上げるようなことがあってもならない。同時に介護ボランティアを、「罪滅ぼし」にもっともふさわしい行為とするような印象操作があってはならないのである。

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