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第100回 外国からの介護人材を戦力化するために求められること

2020/01/06

日本介護福祉士養成施設協会の調査によると、2019年4月に介護福祉士養成施設へ入学した外国人留学生(介護留学生)は2,037人で、18年度の1,142人の約1.8倍に増加したそうである。この傾向は、入学者減少が続いて経営にも支障を来している介護福祉士養成校にも吉報であるが、何よりも介護人材不足に四苦八苦する介護事業者にとっても喜ぶべき傾向であると言える。

これは、入管法改正が行われ(平成29年9月1日施行)、在留資格に「介護」が加えられたことによって、外国人が介護福祉士として在留資格を得られるようになり、かつ在留期間の5年が回数制限なく更新できるようになったことで、実質永住できることになった影響が大きいのだろう。勿論、すべての外国人留学生が日本への永住を望んでいるわけではなく、どれだけの外国人が固定化できるのかという課題は残されてはいるが、生産年齢人口が益々減少する我が国において、日本人だけで介護人材が充足することはあり得ないということははっきりしているので、それらの外国人留学生をはじめとした人材が、介護サービスの場に張り付いていかないと、制度あってサービスなしという状態が、社会の闇として広がることは間違いのないところで、大量の介護難民を生み出すことも間違いのないところだ。

現に今、この時点でも人材不足で、指定サービスの休止に追い込まれている事業者が全国にたくさん存在している。例えば、福祉医療機構(WAM)が貸付先の特別養護老人ホーム(特養)を対象に実施した「介護人材に関するアンケート調査」によると、2018年3月時点の状況について72.9%の施設が「要員不足」と回答し、全体の4.1%が特養本体での利用者の受け入れを制限していた。併設する施設で利用者の受け入れ制限を実施している割合は8.8%だったことが公表されている。そこではサービス利用者がいるにもかかわらず、ショートステイなどの指定サービスの提供が制限されているのである。そうした地域でショートステイを利用できなくなった人が、代替サービスとして宿泊サービスを自費利用する、「お泊りデイ」等を使えるならまだよいが、全くサービスを使えない人や、サービスがないことで、社会的入院を強いられている人がいたとすれば、それらの人はすでに介護難民ともいえるわけである。

来年は、団塊の世代の人がすべて70歳に到達し、介護サービス利用者がさらに増えることになる。それらの人達に、適切なサービスの量を確保するための人材確保は、なかなか進んでいない。介護労働安定センターの介護労働実態調査結果を見ても、2018年10月時点でEPA(経済連携協定)介護福祉士候補者、技能実習生、日系人、留学生のいずれかが働いている事業所の割合は2.6%に過ぎない。今後は、人材確保のために、この数字はどんどん上がっていくだろうし、そうしなければ介護事業そのものに支障を来す事業主体が増えるだろう。そうであるからこそ、それぞれの事業者で外国人労働者を受け入れるためのシステム、それらの人たちが働きやすい環境整備に努めていかねばならない。今、そのことに全く興味を示しておらず、対策もまったく考えられていない事業者に、未来はないかもしれない。外国の人たちが、実際に働いてくれるかどうかは別にして、近い将来外国人人材も戦力として固定化されるための対策は、すべての事業者で急いで構築していく必要がある。それもリスクマネージメントである。

その時、考えなければならないことは、外国から来る人達が、日本の労働の場にマッチングせず、トラブルが生ずる大きな要因は、言葉や文化の違いだけはないということだ。むしろ、トラブル要因となるのは、外国人労働者に対する、雇用主や日本人従業員の偏見にも似た、「思い込み」である場合が多い。外国から日本へ来る人たちは、労働力としてやってくるわけではなく、人間としてやってくるのである。そのプライドを無視してはならない。同時に外国の人達はしっかりと、「出稼ぎ」意識は持っているという両面を理解せねばならない。単に、日本に滞在して自分の暮らしが、成り立つだけではなく、母国で暮らす家族に送金する目的で、遠く日本まで来ている人たちが、その目的を達せられないと、戦略として固定化はされないのである。雇用するに際して、給与などの待遇について、しっかり隅々まで丁寧に、説明して納得したうえで雇用契約を交わさないと、後々のトラブルにつながるという理解も不可欠だ。就業規則等の労務管理規定も、紙を渡して、「就業前にすべて読んでおいて」では済まない。しっかり説明しないと外国人の方は、職場の基本ルールさえ理解しないまま就業して、そのことに関連した問題が生ずるケースも多い。事業者側の説明責任は、より重要になってくる。

外国人の人たちのプライドやポリシーにも気を配り、働く喜びを持ちながらスキルを向上させる意識付けをできるかどうかが、今後の介護事業の安定経営に、直結してくるということを理解する必要がある。そういう意味では、外国人の受け入れに関しては法人の中で、専任の担当者を作って対策を立てる必要性も高まると思う。ある程度規模が大きな法人は、専任ではなくとも外国人材受け入れ担当部署及び担当者を任命しておくべきである。

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