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第103回 業務用語を変えて意識改革につなげよう

2020/03/16

介護施設にとってショートステイの稼働率は、収益率に直結する重要なファクターである。特養が施設サービスと並行して行うショートステイサービス(短期入所生活介護)は2種類ある。空床利用ショートと併設ショートである。

前者は、一般入所者が入院した場合の空きベッドを利用してショートステイ利用者を受け入れるほか、退所者が出た際に、新規入所者が入るまでの空白期間を埋めるために、ショートステイ利用者を受け入れるものである。特養の場合は老健と異なり、入所者が医療機関に入院しても即退所とはできない。概ね3カ月は入院した利用者の籍を特養に置き続け、その期間にいつでも退院を受け入れる体制を、維持していなければならず、その期間のベッドを有効に使う意味でも、「空床利用ショート」は重要である。また、併設ショートは、一般入所定員の外枠としてショートステイの定員を別に定め置き、その定員内で利用者を受け入れるもので、老健のように一般入所の定員内でショートを受け入れる内枠ショートとは異なっている。つまり、併設ショートは、一般入所に上乗せした収益を得られるサービスだから、その稼働率が施設全体の収益に直結する重要な事業でもある。

老健にとってもショートステイは重要なサービスである。前述したように、老健ショート(短期入所療養介護)は、一般入所定員の内枠であるが、それ故に何らかの事情で一般入所の稼働率が下がった場合に、そのベッドをショートステイで稼働することによって、施設全体のベッド稼働率を下げないようにできる。そのような調整弁の役割をショートが担うという意味でも重要なのである。

介護保険制当初は、特養も老健もショートステイの需要が多く、数カ月前から予約しないとベッドが取れないという売り手市場であった。しかし、制度開始から20年経って、その状況は少しずつ変わってきている。お泊りデイサービスのようにショートステイより使いやすい宿泊サービスができ、小規模多機能居宅介護という宿泊サービスを伴う新たなサービスも生まれ、特定施設入居者生活介護における空き部屋を活用したショートステイの要件も大幅緩和されるようになった。こんなふうに、介護施設のショートステイ以外の、宿泊・滞在サービスが増えている。そのため、ショートステイの稼働率が低下し、収益率が下がっている施設も決して珍しくなくなった。地域によっては、介護保険施設のショートステイと、他の宿泊サービスとの競合が生まれ、それらのサービスを利用する、「顧客」の奪い合いが行われているのだ。

このこと自体は、利用者にとって良いことだ。過去には、ショートステイという社会資源を使うために、何カ月も前からサービス提供側に頭を下げて予約申し込みし、いざサービスを使う際も事業者職員の尊大な態度に遭遇しながら、顧客が気を使い、そうであるにもかかわらず、対応困難という理由で、簡単にサービス途中でショート中止を強要されるというケースも多々あった。それは、対人援助サービスとして健全な姿ではない。それは、事業者側に「施し」・「利用させてやっている」という意識が蔓延している状態と言え、利用者を顧客と見ない横柄な対応に終始する事業者側の、「驕り」が垣間見えるような状態と言えた。ショートステイが、売り手市場ではなくなる過程で、そういう事業者が淘汰され、利用者をきちんと顧客と認識して、もてなす事業所が生き残っていくのは当然の帰結である。そのためにも、ショートステイを利用する顧客に対する、従業員のサービスマナーはますます重要になる。団塊の世代の人々が、こぞってショートステイを利用してくれることによって、収益は上がり経営は安定し、そのことが、従業員の待遇アップにもつながっていくのだから、ここをおざなりにはできない。

そのためには従業員に、「利用者はお客様である」という教育を徹底し、顧客に対するサービスの在り方とは何かという意識づけを行いながら、従業員のホスピタリティ精神が、生まれるような土壌作りをしなければならない。その時に、ホスピタリティ精神につながる意識改革を促すものが、業務で使う用語の改革である。

ショートステイは、「短期入所生活介護もしくは短期入所療養介護」が正式名称であるから、「入所・退所」という言葉を使うことが多い。しかし、その実態は滞在サービスであり、短期間で利用開始や終了が繰り返されるサービスでもある。この特性を鑑みて、「入所・退所」という言葉を少し変えてみるだけで、職員の意識改革につながることがある。利用者が顧客であるときちんと意識できる改革につながるのである。

例えば、僕が経営指導に携わっている特養では、ショートステイの利用開始の際は、「入所」ではなく、「チェックイン」という言葉を使っている。同じく利用終了は、「退所」ではなく、「チェックアウト」である。「チェックイン」・「チェックアウト」という言葉を、全従業員が統一して使うことにより、利用者が顧客であるという意識を高め、顧客に対するマナー意識を忘れさせないようにしている。このことは、言葉狩りではなく、意識改革上必要な業務用語の変更だと思っている。こうした細かな改革を、積み重ねることによってしか、職員の意識改革は進まないし、サービスマナー意識が職場に浸透することはないのである。しかし、サービスマナー意識が浸透した事業者では、ごく自然に、顧客に対する従業員のホスピタリティ精神が生まれ、そのことが、顧客から選択される事業者へと繋がっていく。この部分の教育に、いくらお金をかけたとしても、それ以上の収益につながってくことを知ってほしい。

このように、サービスマナー教育は、法人の人材を作り育て、大きな収益にもつながっていくのだから、それはとりもなおさず、法人の財産になることを意味している。そのことを、介護事業経営者の皆さんには、是非理解していただきたいと思う。だからこそ、職場単位でサービスマナー研修を行いたいという事業者には、僕はできるだけ協力して、現場リーダーが得心(とくしん)できる話をしている。ある意味それは、僕にしかできない話であるとも言われている。そうした職場内研修としては、全体の職員を一堂に集めて研修をすることもあるし、管理職・リーダー職員と、一般職員を分けて研修することもある。その職場の状況を聞きながらベストな方法を選ぶようにしている。

研修が職場単位となると、小規模事業所では、受講者が少なくなることがある。特に管理職・リーダーのみを対象にした研修会は、受講人数が10名に満たない場合もある。それを気にかけて、僕に講師依頼することをためらったり、恐縮に思う人がいたりするが、そんな必要はない。受講人数や研修規模は、僕にとってほとんど関係のない問題であり、僕を講師として求めてくれる熱意のある人がいる場所であれば、全国どこでも駆け付けるつもりだ。

その点でもどうか敷居を高く感じないで、「北海道介護福祉道場 あかい花」に掲載されている連絡先に連絡いただき、気軽に相談願いたい。

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