HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話 > 第110回 民度が低い介護業界の現状
2020/12/21
サービスマナー意識をもって、丁寧な対応を心がけるというのは、接客を伴う職業において極めて当然の常識である。しかし、介護事業者に勤める人たちで、このことを全く理解できていない人はかなり多い。自分たちの職業が接客業であり、サービス業であるという基本も理解できていない人も多い。
介護・福祉・医療業界以外で、「お客様にタメ口は使ってはなりません」などという教育は成り立たない。それは極めて当たり前すぎることだから、サービスマナー研修でも、そのようなレベルの話をする講師は呼ばれなくなる。ところが介護業界は、そこからサービスマナーの話を、始めなければならないだけではなく、そもそもサービス利用者が、「顧客:お客様」であるという概念から、話さねばならないことも多い。それほど民度が低い業界である。
介護職員の中には、家族が家庭内で、会話する際に使う言葉遣いが、利用者との距離を縮め、良好な関係に結び付くと、勘違いしている人が多い。介護職のみならず、経営者や管理職という労務管理のトップに立つべき人の中にも、自分自身を律することなく、言葉や態度を崩して接することが、利用者が求めている関係性であると、勘違いしている人が多い。要するに、丁寧な態度や、丁寧な言葉遣いで、良好な関係性をつくれないほど知性に欠け、コミュニケーションスキルが低い人間が、介護業界に数多くはびこっているという意味だ。お金を支払ってサービス利用する人に対して、そのお金を原資にした給与をもらう側の人間が、タメ口で接することが、どうして許されると考えるのだろう。そうした失礼な態度を、「家族的・家庭的」と考える知性の低さは、どこから来るのだろう。
私たちは介護のプロフェッショナルとして、介護という職業を通して、金銭対価を得ているのだから、家族と同じでは困るのだ。私たちの働く場所が、利用者にとって、家庭のようにくつろぐことのできる場所にする必要はあっても、実際の家族ではない私たちが、家族と同じような、遠慮ない態度や言葉遣いで、利用者に接することが、「くつろぎ」ではないわけである。そこではプロとしての業(わざ)を、期待されているのだから、接客態度として、正しいマナーを持って、利用者の方々に、満足感を与えられなければならない。そのためのサービスマナーであり、そこから真のおもてなしの心(ホスピタリティ精神)が、生まれるのだということを、理解する必要がある。そもそも私たちサービス提供者と、サービス利用者の方々との関係性とは、家族関係でも友人関係でもない。そうはなれないし、なってもいけない。それはあくまで、サービス提供者と顧客の関係性でしかなく、そこではくだけた態度は失礼な態度と、誤解されても仕方がないのである。そういう誤解を受けないために、規律が必要となるのだ。従業員が、規律を守って働く態度を身に着けるために、サービスマナー教育は不可欠であり、それは計画的・継続的に行わなければならない。それは従業員の悪気のない態度や言葉遣いで、利用者の心を傷つけ、不快な思いをさせないためにも求められることである。
ところが、こうした教育を、「従業員への押し付け」と感じる人がいると言われたり、サービスマナーを持って、接することが求められることについて、「やらされ感が半端ない」という声が、聴こえてきたりする。これこそ介護業界の民度の低さの象徴である。職場にはルールがあって当然だ。そうしたルールを護ることが、その職場で働き続けることの条件であり、職場のルールを護ることができないというなら、その人はその職場で働く権利を失うのである。就業規則で定められた礼儀ある態度を、「押し付け」とか「やらされ感」と思うなら、その時点でその人は、その職場にいてはならない人とされて仕方がないのである。学生ではなく社会人なのだから、職場のルールに沿って働くことに疑問を持つべきではないし、職場のルールが嫌でおかしいと思うなら、別の職場を選ぶべきなのである。
そのような幼稚な疑問を、一つ一つつぶしていかねばならないのが、介護業界の現状である。ひとりひとりの従業員が、もっと介護業界全体の民度が高まるように、介護のプロとしてのコミュニケーションスキルを向上させる努力をしてほしい。
管理職レベルでその理解ができない人は、顧客に接する以外の別な職業を探した方がよい。