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第116回 BCP策定過程を事業者財産にしよう

2021/06/21

令和3年度からすべての介護サービス事業者に、業務継続計画(以下BCPと略す)の策定義務が課せられている。ただし、この義務化には3年間の経過措置が設けられており、令和6年3月31日までの間は努力義務とされている。

だからと言って、この経過措置に胡坐をかかずに、できるだけ早くBCPを策定しておくべきだと考えている介護事業経営者は多いと思う。何故なら感染症や災害が、非常に身近になってきて、他人ごとではなくなっているからだ。

コロナ禍は、その最たる例である。この騒動が一旦落ち着いたとしても、新たな感染症が数年を経ずして、出現しても何も不思議ではなくなってきている。気候変動の影響も、年々深刻さが増しているように思える。台風や豪雨、それに伴う水害といった被害も、日本中どこにいても避けられないと考えざるを得ない。

そのため経営戦略上、BCPは必要不可欠なものとなっており、実効性のあるBCPをできるだけ早急に、策定したいと考える介護事業者では、経営コンサルなどのBCP作成に長けた専門業者(それが実際に存在するかどうかは、議論があるところだが)に、その策定業務を請け負ってもらうところも出てきている。それも一策であるが、ちょっと待てよと言いたい。

専門業者に策定を請け負ってもらえば、それなりのBCPが早期に策定されることは間違いない。お金をかけても、きちんとした計画が策定され、将来的に事業者や利用者を護ることにつながるのなら、それはかけて価値あるお金であるとする考え方も理解できる。でもそれでよいのだろうか・・・。専門業者に丸投げして計画を策定しても、それは本当の意味での法人・事業者の財産にはならないということを考えてほしい。

BCPは、感染予防マニュアルのように、よそから持ってきたものを、そのまま使うようなことはできない。有事に業務を継続するためには、個々の様々な状況に対応する必要があるため、事業者の立地環境・地域事情・設備状況・利用者属性等に大きく左右される要素が強いために、必然的に事業者独自の計画策定が求められてくるからだ。つまりBCPは、策定事業者の個別事情や背景をあぶりだすところから始まるのだ。その過程では、介護事業者に対する地域住民の認識、介護事業者に対する地域住民の真のニーズなどが、明らかになってくる。(※明らかにならないとすれば、そのような状態で策定されるBCPは役に立たない)

その過程では、介護事業者の経営上の課題が、明らかにされるとともに、将来にわたる経営戦略につながる方向性も、見えてくる可能性が高い。それは法人・事業者財産に直結するものだ。

そもそもBCPを策定できる専門家を、事業者内にきちんと創っておくことそのものが財産だ。計画策定に携わる職員が、その過程で得る専門知識は、全て法人・事業者の経営戦略につながる知識であると考えてよい。事業者内の人材が、そのような知識や見識を得る機会を、みすみす逃しても良いのかどうかを考えてほしい。法人内に策定責任者・策定専門家がいることで、事情に応じた計画変更も柔軟に行うことが出来るようになるが、業者に丸投げ策定したBCPは、数年の間の変化に対応できずに硬直化・形骸化する恐れだってある。

そうした諸々のことを考えるならば、経過措置を最大限に利用して、法人・事業者内にBCP担当部門と責任者を設置すべきであると思う。ただし、経過措置の最大利用とは、3年後に計画を策定すればよいとして鷹揚に構えて、ゆっくり事を進めてよいという意味ではない。最大3年という期間があるのだから、それを最大限生かして実効性の高い計画を作成するため、専門部門や責任者を一日も早く決めて、早急に計画策定に向けた取り組みを行う必要があるという意味である。ゆっくり作業を進めるのではなく、早急に作業を進める体制を整え、じっくり検討し実効性のある計画策定とする必要があることを理解してほしい。

BCP策定に関連するセミナー等は、今後全国各地で開催されることになるはずだ。そこに担当部門職員を参加させながら、職場内でBCP策定の戦略会議を定期的に開催して、独自の計画策定に向けた準備を進めてほしい。その過程で外部のコンサルタントに指導・助言を求めることはあってもよいと思うが、外部業者に頼り切って、丸投げ策定することだけは避けてほしいと思う。

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