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第117回 見守り機器導入効果は高く、自信を持って推奨できますが・・・

2021/09/06

介護の場で利用できる、「見守り機器」は、年々進化の一途を辿り、その性能は大変優れていると思う。介護施設等の夜勤帯では、「見守り機器」を導入することで、定時巡回をしなくてよくなるので、夜勤者の業務負担は大幅に削減されることは間違いのないところだ。

例えば、定時巡回時間が減ることで、その時間に記録業務を行うことができれば、記録すべき書類を家に持ち帰って、プライベートの時間を削る必要もなくなる。自宅での書類仕事など最初からしなくてよいことだし、すべきでないという正論は、介護職員の業務実態を知らない人の戯言(ざれごと)でしかない。多くの介護事業者で、介護職員が支援記録を家に持ち帰って、記録しているという実態があるのは事実だ。そうせざるを得ないほど、介護現場の業務は記録に追われているという一面があるのだ。それは、国が声高に喧伝する書類削減によって減らされているのは、事務書類だけで、介護職員の書くべき記録は、報酬改定のたびに増え、そのことに介護業務が振り回されるという実態も表している。こうした記録業務の時間が別にとれるようになるのも、定時巡回をしなくて済むメリットの一つだ。それ以外にも、定時巡回をなくすことで可能になる業務は多々ある。それぞれの施設の事情に応じて、一番必要な業務なり、あるいは職員の休憩を組み入れるなどして、サービスの品質もしくは、職員の仕事のパフォーマンスを、向上させる方向に繋ぐことができるのが、「見守り機器」の活用だ。

このような「見守り機器」を開発している日本のメーカーは、その技術を大いに誇るべきだし、我々介護関係者は、その技術力の高さを讃えなければならない。それは嘘のない素直な気持ちである。

ところが、このように性能の高い見守り機器の利用を、国は介護現場の配置人員削減とセットにするという方向で舵を切っている。見守り機器を導入して業務削減が図られた分を、職員の休憩を増やして、心身負担を減らそうという方向でもなく、他の業務が出来る可能性を探ることで、介護の品質アップにつなげたり、サービス残業を減らしたりする方向ではなく、それを、そっくり人員不足の対策に充てて、職員が少なくても仕事ができるように運営基準を緩和しているのである。

それは、介護現場の職員が望む方向ではないし、間違った方向性であり、結果的に夜勤に従事する職員の業務負担は増え、仕事のパフォーマンスは低下し、心身の負担は増加し疲弊していくことを懸念しているが、勘違いしてほしくないのはその考えは、見守り機器の性能を疑っているという意味ではないということだ。

前述したように、現在日本のメーカーが販売している見守り機器の性能自体は世界一である。それは介護現場で使いこなすに際して、これ以上ないほどニーズに合致した性能と言えるのである。ただし、見守り機器という製品の性格上、人に変わって介護をしてくれないという当然の結果として、見守り機器を導入したからと言って、そこで介護業務を行うべき人の数を減らしてよいということにはならない。

この僕の主張は、国の見守り機器活用の目的と方向性からは外れていると言える。厚労省の役人からすれば、見守り機器の導入を図っているのに、配置人員を緩和できないのでは意味がないという理屈になる。見守り機器メーカーも、国からの推奨を受けるためには、「当社の見守り機器の導入によって、夜勤職員の配置数を減らして、人員不足に対応することができる」と喧伝したいと考えて当然だ。だから見守り機器メーカーがスポンサーとなる研修会や講演会では、そういう方向で見守り機器を解説して推奨してくれる講師が求められており、「見守り機器は優れているけれど、それをもって介護現場の人員を削るのはまずい」という本音を語る僕は、講師として呼ばれることはない。

講師依頼を受けた研修の事前打ち合わせで、「こうした内容で話をすることになりますけど、それでよいですか」と問いかけるときに、「スポンサーは、見守り機器のメーカーなので、それは少し困ります」という話になって、「それでは、またの機会に」ということで、お断りさせていただいた研修講師依頼は決して少なくない。それは、事前の講師依頼の照会の中での話し合いだから十分ありだろう。そのことで僕が気分を害することはない。僕が本音で語ることを、聴いてくださる研修会や講演会でなければ、僕が語る必要はないのである。

さすれば逆説的に言えば、今後、僕が「見守り機器」について講演する際に、そのスポンサーの中に、見守り機器メーカーが含まれているとすれば、その見守り機器メーカーは、僕が「見守り機器=人員削減ではない」ということを、語ることを事前に承知しているメーカーであり、それだけ製品に自信を持っているということだ。そういうメーカーの見守り機器は、介護現場で安心して導入・利用してよい製品であると言ってよいのではないだろうか。

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