HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話  > 第119回 若い芽を摘む職場が介護人材を枯渇させている

U+(ユープラス)

U+のTOPへ

mssaの介護・福祉よもやま話

コラムニストの一覧に戻る

第119回 若い芽を摘む職場が介護人材を枯渇させている

2021/11/29

高校を卒業して介護福祉士養成校に入学してくる学生は、介護福祉士になりたいという様々な、「動機づけ」を持っている。しかもその動機づけは、かなり強く重たい動機づけであることが多い。

学生時代に進路指導の際に担当教員から、介護の仕事に将来性はないので、進路を考え直すように指導されたにもかかわらず、強い意志で当初からの動機づけを護って、入学してくる学生も少なくない。その中には介護福祉士として働く自分の親の姿を見て、あんなふうに人の役に立つ仕事をしたいと思って、入学してくる学生もいる。まさに親の背中を見て育った結果である。そんな風に我が子に尊敬される介護福祉士は、きっと誰もが認める信頼される仕事をしているのだと思う。そしてその仕事ぶりを、自分自身の姿や言葉で子供に伝えているのだろう。それは尊敬に値することだと心から思う。自分の仕事に誇りを持っているからこそ伝わるものがあり、我が子の心を動かすのだろうと思う。そんな家庭で育った若者が、変な人間になるわけがない。

彼ら彼女らは、親とその仕事に誇りを持っているから、自分が介護の専門職になろうと、頑張ることにも誇りを持っている。介護の仕事に決して将来がないとは思っていない。むしろその子たちは、自分の将来を、自らの力で手に入れようとしているのである。彼ら彼女らに幸あれと願うばかりだ。そういう介護人材こそ本当の意味で、「金の卵」だと思う。そうした人材をつぶさないように、大切に育てたいと思いながら彼らを指導している。

ところが、そんな大切な人材をつぶしているのが、人材を求めているはずの介護事業者である。そこで働く介護職員が、若い芽を摘み取ってしまうという現実がある。介護実習中に介護技術を伝えようとせず、職場のルーチンワークを指導して、終わるだけならまだしも、そこで利用者の方々に、丁寧に接しようとしている若者に、「そんなことしていたら、いつまでも仕事が終わらないよ」と言って、乱暴で機械的な作業を強いる人がいたりする。

それに対して学生は、疑問の声さえ挙げることを許されない。何か言おうとしたときに、「理想と現実は違う」という言葉で、すべての声は封殺されてしまうからだ。しかし、理想と現実が違っているのは当たり前だ。理想は目指すべきものであり、現実がそこに達していないからこそ、目標にする理想が存在するのだ。その目指すべきもの自体を否定して、どうするのだと言いたい。あなたの現実のひどさを、何とかしようとして、理想があるということを忘れないでほしい。

人は間違ったことを他人に強いるとき、「それが現実だ」と言うのである。そうした間違った指導が、そこかしこで行われているから、人材は育たず、良い人材ほど、先にバーンアウトしてしまうのだ。そのような人材をつぶす指導が、学生実習の場だけではなく、新卒者が就職した職場で、入職初日から行われることも多い。そこで志のある若い芽は、摘まれてしまうのである。これが日本の介護現場の実態の一部であり、人が育たない根本原因でもある。ここにメスを入れない限り、介護人材不足は解消しないだろう。

昨今の介護業界は、そこで働く人々に、仕事に見合った対価を支払おうという方向に動き続けている。政治もやっとその方向に舵を取り始めたところだ。そうした風を受けて、まともな介護事業経営者なら、介護福祉士の存在価値をきちんと認めて、相応の対価を支払う方向に舵取りをしていくはずだ。そういう意味でも、介護の仕事に将来性がないことにはならないし、介護福祉士という有資格者の未来は決して暗くないのである。

介護という職業に光が差し始めているのだ。しかし、その光を遮るのが、介護の場で働く志を持たない先輩職員であるという現実がある。それが光の届かない影を作り、闇を深くする根本原因だ。

この闇を払うために何をすれば良いのか・・・、そんなことを考えながら日々情報発信を続けている。そして志を同じくする人々と、闇を払うためのスクラムを組もうと繋がりあっている。どうかその輪の中に読者の皆さんにも入ってきてほしい。

そして貴方の職場が、どうぞ若い芽を豊かに育てる職場環境であってほしいと思う。どうぞ若い芽を枯れさせないように、あなたの手で水を撒いてください。

上記のコラム購読のご希望の方は、右記の登録ボタンよりお申込みください。

登録はこちらから