HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話 > 第125回 介護が人に向かい合う職業であるという意味を考える
2022/08/01
介護の仕事は、「対人援助」とも呼ばれ、様々なパーソナリティを持った人間に向かい合う職業だ。介護保険サービスの場合は、その主な対象は、65歳以上の1号被保険者の高齢者の方々である。よって多くの場合、自分より人生経験を重ねた顧客に対して、サービス提供をしなければならないという意味になる。だからこそ人生の先輩に対して失礼がないのと同時に、お客様に対して失礼な態度を取らないように、「サービスマナー」を身に着けて、適切な対応に心掛ける必要がある。
私たちは、対人援助を通して生活の糧を得ているのだから、そこでは対人援助のプロ、介護のプロとしての態度に徹する必要があるのだ。そこでは、相手の最も喜ぶ態度で接しようなんて考えるより先に、相手に失礼がない態度に徹したうえで、おもてなしの心を忘れないことが大事である。親しみやすさよりも、礼儀正しさの方が、プロとして求められる態度なのだ。
なぜなら、他人の気持ちなんて、神様でないとすべて理解することは不可能だからである。親しみやすい態度だと思って接したら、馴れ馴れしく、失礼だとされることは良くあることだ。そうならないように、礼儀正しく接することこそが、対人援助のプロとして求められるのである。
ここを勘違いしている人間が多い。言葉や態度を崩すことが、親しみやすさだと勘違いしている輩も多いのが、介護事業従事者の特徴でもある。その最大の理由は、長引く介護人材不足の影響で、募集に応募した人間を適正判断することなく、闇雲に採用してしまう介護事業者が多いからだろう。そうした状況で、対人援助としての知性に欠ける、対人援助の適性がない人が、たくさん介護の仕事をしているのだ。
それと同時に、管理者・管理職の中にも、対人援助の本質がわかっていない輩が数多く混じっており、そうした事業者では、トップに立つ人物が率先して、馴れ馴れしい無礼な態度で、利用者の心を折ったり、傷つけたりするという状態が見られている。そんな状態を反省さえしない理由は、そうした傷つきやすい、人の心というものを理解できないほど、その連中が知性と知識に欠けているからに他ならない・・・。
そんな恥ずべき存在にならないように、きちんとした知性を身に着けよう。サービスマナー意識は、その知性の一端を成すものである。
私たちは、仕事以外では決して向かい合うことはない他者の、最もプライベートな空間に踏み込んでいくのである。そこでは利用者が、他人に見られたくない、知られたくない部分も全て、さらけ出させているという側面があるのだ。介護とは、そうした宿命を持つ職業でもある。そうした職業に従事する者としての、責任と使命を忘れてはならない。利用者の心の奥深くまで、私たちの一つひとつの振る舞いが、影響を与えていくのだということを決して忘れず、だからこそ、人の心を傷つけ、人の心を殺してしまう要素があるものを、できるだけ排除しなければならないのである。
聖人君子や天使になる必要なんかないが、人生の先輩に対する敬意や、お客様に対してとるべき態度を、忘れない人になる必要があるのだ。このことを理解できない人は、介護事業に携わるべきではない。他者の暮らしに介入する仕事をすべきではないのである。