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第131回 介護=人権の前に、プロが行う仕事である

2023/03/13

ホテルマンが顧客に対して、丁寧な接客ができている理由は、そこに人権意識が根強くあるからなのか?そんなことはない。どこに出しても恥ずかしくない接客ができる理由は、ホテルマンという仕事に対して、プライドを持っているからだ。接客業としての使命感とプロ意識が、優れた接客態度に結びついているに他ならない。

一流ホテルになればなるほど、その意識が高まるので、接客もより高い品質で維持されることになる。二流・三流ホテル以下になると、その意識は薄れてしまうか、なくなってしまうために、もはやそこには、接客と言えるほどの対応さえ、存在しなくなることも少なくはない。そうした対応の違いは、顧客に対する人権意識があるなしの問題ではないし、顧客の尊厳に対する考え方の違いでもない。そんなものに左右される以前の、接客業としてのプロ意識の問題なのである。プロ意識を持つことから身に着く態度が、いつどこであっても通用する態度につながるのだ。

介護という職業にも、同じことが求められる。介護事業に携わる対人援助のプロという意識をもって、利用者に相対するという姿勢が必要だ。勿論、介護は他者の暮らしに深く介入するのだから、人権意識を失ってしまっては、適切な支援につながらなくなる。それは至極当然のことである。だからと言って、それをあまり前面に出し過ぎると、うわべだけの人権意識が生じ、自分たちの仕事が他の仕事に比べて、尊い仕事だという勘違いが生まれかねない。

本来職業に貴賤はない。人に相対することのない汚物処理の仕事であっても、その仕事がないと、社会が成り立たなくなるという意味で尊い職業である。そういう意味では、人の暮らしや人権を護る目的のある介護の仕事も、数ある職業の一つに過ぎないのである。

そうであるにもかかわらず、介護という職業が、人権を護る職業だから尊い行為だという意識を、前面に出し過ぎることによって、逆に施し(ほどこし)意識が生まれ、上から目線で「タメ口対応」が横行するという勘違いも生まれる。それこそが「うわべだけの人権意識」である。本来の人権意識とは、人間尊重の価値前提を基盤として、介護サービス利用者の方々に失礼がないように対応し、かつより良い状態になってほしいという「おもてなし」の思いを自然に抱くことである。

そうした思いは、マニュアルで生まれるものではなく、日ごろからのマナーある態度と、高品質サービスを提供しようとする努力の中で、ごく自然に身に着くものである。人から口うるさく指導されて、生まれる思いではないのだ。だからこそ、まずは自分の仕事にプロ意識を持つことが大事なのだ。そしてプロが行う仕事である以上、その成果を出すために、自らのスキルを高める努力が必要だというだけの話である。

介護の仕事だからといて、神の座に乗った仕事をしているわけでも、させているわけでもないのだ。どこにでもある普通の職業のひとつとして、介護という職業に携わる専門家としてのプロ意識を育てることが大事なのである。

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