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第133回 記録の上達は無駄な努力

2023/04/10

介護保険事業は、国費と保険料を財源とした事業であるために、そうした財源を、正しく使っているのかという適格性が常に問われる。その為、行っていることの正当性を証明するために、数多くの場面で正確な記録が求められる。

介護現場もしかりで、支援記録をはじめとして、各種加算の算定要件に関わる記録が、多種多様に求められている。介護保険制度創設以降、こうした記録すべき事柄が増え続け、それが介護の場の職員に、過度な負担を与えている。そして記録のために、肝心の介護がおざなりになるなんて言う、本末転倒な状況が生まれかねないということが、懸念されるようになった。

その為、書類の削減・記録作業の軽減が、制度改正・報酬改定の主たる議論の中に組み入れられているが、そこで行われていることは、事務作業の軽減策でしかない。肝心の介護職員や看護職員の記録の削減・省力化は、全く手つかずの状態で、放置されていると言って過言ではない。そんな中で、支援記録等を簡潔で、わかりやすく書くように、介護職員も記録能力の向上が、求められるわけである。・・・ずっと昔から、その状態に変わりはない。つまり、介護の場の主戦力である介護職員等の記録の上達は、過去に遡って大きな課題となっているが、いまだにその実効性が現れたことがないのだ。

例えば、記録する能力の上達を目的に、書式の統一とか簡素化とかも進められているが、そもそも記録する能力の問題を、書式やシステム論にすり替えるから、何十年も同じ課題と、実効性のない取り組みの繰り返しに終わっているのである。ここを根本から変えなければ意味はない。

もともと良い書き手は、良い読み手でからしか生まれない。しかし、そうした能力を磨くことができる年齢にも、限界というものがある。社会人として、いっぱしの価値観が出来上がった年齢以降に、改めて良い読み手になって、文章力を鍛えるという地道な作業を、続けられる人はそう多くない。ほとんどの人は、20歳前に獲得した文章力がそのまま、己(おのれ)の作文スキル・記録能力になっているのだ。そうした能力を、今更引き上げようとすることに無理があるし、介護職員にとっては、介護という行為そのものが、重要なスキルなのだから、記録の上達なんてことに、無駄なエネルギーを遣わせないようにした方が、良いのではないだろうか・・・。「記録も介護業務のうちだ」なんて、何の意味もないことは云わないで、ここは発想転換すべきではないのか。

そこで、記録作業こそICT化すべきだと主張したい。タブレットに自分が行った行為を言葉で録音し、内蔵したAIでその言葉を読み取って、簡潔な文章化を図るなんて言う技術は、既に出来上がっているだろう。そうした技術を、介護の場にあうようにプログラミングして、介護行為を行いながらタブレットに話しかけ、それがそのまま個人別の支援記録・バイタル等の記録と、連動されて表示されるようになれば、介護職員の業務は劇的に軽減される。ここに知恵と技術を集中すれば、使えるアプリなんてすぐできそうな気がする。そして、それは莫大な利益にもつながると思えるので、IT能力の高い方は、是非そうした方向で、アプリ作成に取り組んでいただきたいと思う。

どちらにしても、薹が立った人たちの記録能力を上達させようなんて、できもしないことに、時間とエネルギーを使ってはならない。もっと現実的で、なおかつ過去になかった斬新な方法で、記録業務を根本から改善してほしいと思う。

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