HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話 > 第135回 利用者の思いに応える支援者の姿勢
2023/05/29
私たちソーシャルワーカーは、利用者援助に際してアセスメントを行い、介護計画を策定する。介護保険制度におけるアセスメントの意味は「解決すべき課題の把握」と説明されている。(※厚生省令第三十八号第十三条七等)
このように利用者の課題に対して、私たちソーシャルワーカーがどのように対応するかについて分析し考えることからケア対応は始まるのだ。そこでは自分の役割が何かということを含めて、支援方法を具体的に考えることになる。この際に用いるアセスメント方式は様々である。介護保険制度では、課題分析標準項目として23項目が定められているので、これさえ網羅されておればどのような方式を用いても、法令上のアセスメントとして認められる。
介護保険制度外であれば、その23項目に縛られる必要さえない。ソーシャルワーカー各自が、利用者の解決すべき課題を、引き出すことができる方法で対応すればよいのである。しかし、どのようなアセスメントツールを用いても、それだけで利用者の解決すべき課題を、完全に抽出できることにはならない。特に利用者の感情や、気持ちの持ちようということが大きく左右する事柄については、アセスメントツールでは引き出せない部分である。
だからこそ、ソーシャルワーカーは、アセスメントツールを用いながら、利用者の感情に適切に寄り添って、気持ちを汲み取るという感情労働が求められる。しかし、厄介なことに、人の感情・気持ちの持ちようほどわかりづらいものはない。
人間というのは、なかなか複雑な生き物で、思っていることをなんでも、口にできる人はそういない。しかし、利用者は、口にできない気持ちを含めて、思っていることすべてを、支援者が気づいてくれることを期待する。
利用者は時に、自分の気持ちと正反対のことを言ったり、思ってもみないことを言ったりすることもある。うまく説明できないことも多く、表現したい気持ちの1/100も口にできないという、もどかしい思いを抱えている人も多いのである。それさえ拾ってくれる支援者であることを、利用者は私たちに期待するのである。
だからこそ、私たちには、その思いを汲み取る努力が求められる。利用者と真摯に向き合い、何を求めているかを想像しなければならないのだ。ここはアセスメントツールで引き出せない部分である。
『利用者の真の本音を引き出して、単なるデマンドに対応するのではなく、真のニーズに対応しなければならない』なんて、簡単に口にする人がいるが、それは不断の努力と、目に見えない場所での研鑽によってはじめて実現することだ。『本音を引き出す関係性は、親しい人間関係から始まる』と言って、タメ口対応がその関係性を創り出すなんて思っている人に、本物のソーシャルワークはできないのである。対人援助のプロとしての姿勢にあるまじき、無礼でなれなれしい態度で接する人間に、人は救われないのである。
対人援助という職業では、利用者の暮らしぶりを、より豊かにするという結果が求められる。それは他者に優しく、自分に厳しい姿勢を貫くことでしか実現できない。それだけの使命と責任を帯びているのが、対人援助・ソーシャルワークという仕事だということを忘れてはならないのである。