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第142回 介護報酬改定率と施行時期について

2024/03/25

2024年度の介護報酬改定率は+1.59%とされた。(※光熱水費0.45%増分を含めると+2.04%)

インフレという状況下で、初めて行われる介護報酬改定であったため、過去最高の改定率であった2009年度の3%を上回る改定率を期待していた関係者にとって、プラス改定とは言えこの数字は諸手を上げて喜べる結果ではない。特に事業収益に直結する本体報酬は0.61%増に過ぎず、2021年度の改定率(+0.7%)にも満たないと言うことで、今後の事業経営戦略に頭を悩ませている関係者は少なくないだろう。

改定率が期待より低かった理由は、言うまでもなく財源がないからだろう。特に今回の制度改正では、サービス利用時の2割負担者を、全体の20%から25%まで拡大するという案が見送られた。これが実現すればプラス財源となり得たが、それが見送られたことは改定率に大きな影響を与えたと思われる。厳しい介護事業経営に向かい合う立場の方々は、とにもかくにも算定できる加算を取りこぼさすことがないように、算定要件に合致する体制を整えるしかないだろう。だからこそ今後示される、報酬告示・解釈通知・Q&Aは発出後速やかに読み込んで、その内容の理解に努めなければならない。

ところで、今回の報改定施行時期は、医療分野との関わりが特に深い訪問看護、訪問リハ、通所リハ、居宅療養管理指導の4サービスに限り、改定施行時期を診療報酬施行時期にあわせて6月とすることとされているが、その他のサービスは4月施行となっている。それだけで混乱しそうになるが、さらに現在3種類に分かれている処遇改善関連加算が、「介護職員等処遇改善加算」に統合・一本化される0.98%増分については、全サービスが6月施行となる。8月には、居住費の基準費用が光熱水費のアップ分上乗せされて変更され、かつその他老健などの多床室の室料の利用者負担も課せられる。

それらに対応して4月・6月・8月と最大3回の利用者説明・同意手続きが必要になることを忘れてはならない。

どちらにしても、人材不足が介護事業者の最大の経営リスクとなっているのだから、6月に新設される介護職員等処遇改善加算については最上位の加算Tを算定できるように、職場環境等要件などを整えていく必要がある。下位区分しか算定できなくなると、従業員が他事業者に流れてしまう恐れが、現実的になることを理解しながら準備を進める必要があるだろう。

同時に事業所の裁量権が拡大された配分方法を、早急に決めておく必要がある。配分については、「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に、重点的に配分することとするが、事業所内で柔軟な配分を認める」とされている。その意味は、ほとんど規制なく自由に配分方法を決定できるという意味である。その為、公平性を鑑みて介護職員と、その他の職種の配分を同じ額にすることも可能である。しかしそうなると現行加算を優遇配分されていた介護職員は、現行の配分額より下がった金額の配分しか受けられなくなる。そうしないように現行通り差をつけるのかどうかは、事業者の考え方ひとつである。

どちらにしても、全職員が不満なく納得できる配分方法はあり得ないと思え、今のうちから職員に対して丁寧な説明と意見交換を行って、職場全体で、最も不満の少ない形のコンセンサスを形成するように、努める必要があるだろう。難しい作業であるが、それは避けて通れない作業でもある。

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