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第151回 潜在ケアマネジャー復職支援策の愚策ぶり

2025/01/14

厚労省が主管する、ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会は、12月2日に当面の対策の方向性を描いた「中間整理」を大筋でまとめた。(※資料

この中で、人材確保に向けた施策の一環として、資格を持っていても現場で働いていない「潜在ケアマネジャー」の復職支援を盛り込んだ。その支援策とは、復職時の要件となる再研修の負担を軽減するというもの。具体的には、シニア層らを後押しする観点から、実務経験を踏まえた研修の簡素化を図るほか、オンライン化も含めて、研修を受講しやすい環境の整備を進めるという内容だ。

果たしてこんな支援策で、一度ケアマネジャーをリタイヤした人が、再びその仕事に復帰する気になると思っているのだろうか・・・そもそも、ケアマネジャーがリタイヤする主たる原因は、更新研修の負担ではない。更新研修自体は無駄で、意味がないと思っているケアマネジャーは少なくないが、だからと言ってそれを理由に、職務を放棄しようとまで思う人はほぼいない。

ケアマネジャーが退職する最大の理由は、仕事に見合った待遇が、与えられないことに加え、他職種との格差が、年々広がっていくことに対する不満が、講じた結果なのである。介護職員の度重なる処遇改善に比して、まったくその恩恵を、受けることができない居宅ケアマネジャーは、加重労働の中で、さらに担当者数を増やさねば、給与が上がらない。これ以上の業務負担増に耐えられないとして、リタイヤしていくのだ。

つまり、ケアマネジャーという職務を続けるのをあきらめて、他職種あるいは、他業種に転向する人の多くは、ケアマネジメント業務に対する国の評価が低く、業務負担に見合った対価が与えられないことに、絶望し将来性がないとして転職していくのである。よって本当に一度リタイヤしたケアマネジャーを、復帰させようとするならば、居宅ケアマネジャーの抜本的な処遇改善策を、盛り込む必要があるのだ。

だがそうした対策は、まったく取られる気配がない。例えば今年度の補正予算には、介護職員の賃上げ財源として806億円が計上され、これによって常勤の介護職員1人あたり、およそ5.4万円の一時金を支給できると、政府は説明しているが、この補助金についても、居宅ケアマネジャーは対象外とされている。こうした扱いに絶望感を持っているケアマネジャーも多く、生半可な処遇改善策では、再びケアマネジメント業務を行いたいという、動機づけにはならないだろう。ましてや更新研修を受けやすくしたとしても、「それがどうした!!」と言って終わりである。

国は、「潜在ケアマネジャー」を掘り起こすなんて言っているが、一度リタイヤしたケアマネジャーとは、評価が低すぎるケアマネジメント業務の過去を、洗い流したいという思いを持つ、「洗剤ケアマネジャー」と言っても良い気持ちを持っているのだ。その人たちにとって、今回の方針は余りにも人を、馬鹿にしたものとしか言いようがない。

そもそも、国が過去に実施した、介護福祉士などの潜在人材の掘り起し策は、成功したためしがない。愚策に愚策を重ねて、恥じないのはどうしてなのだろうか・・・官僚にしても、検討会の委員にしても、頭は良いのだろうが、あまりにも世間知らず・現場知らずである。

過去に学ばず、空論ばかり繰り広げる人間は、知性に欠けると云われても仕方がないと思う。

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