HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話 > 第153回 夜勤明け翌日の休日が保障されていないという危うさ
2025/04/21
僕が、大卒後に初めて社会人として勤務したのは、社会福祉法人が、新規に設立した特別養護老人ホームであり、そこで生活指導員という職種に従事するように発令を受けた。新しい特別養護老人ホームがオープンする2週間前から、その準備のために勤務に就いた僕が、最初にしなければならなかったのは、介護職員(※当時は寮母という職名だった)の勤務表を作成する仕事だった。とはいっても大学を卒業したばかりの僕に、労働基準法等に則った勤務表を作成できる術もなかったが、当時の施設長から基本的なパターンだけ教わり、労基法の最低限のルールだけは独学で身に着けて、何とかシフト勤務表を作成することができた。
その当時のシフトパターンとは、日勤・日勤・早出・夜勤・明け休・公休を繰り返すパターンで、シフト勤務者は6日に1度の夜勤を行うことになっていた・・・ただし、これだと年間労働時間が規定時間を超えてしまうために、日勤・日勤・早出・夜勤・明け休・公休・公休・日勤・早出・夜勤・明け休・公休などと、本来日勤をすべき日に公休をいれて、夜勤明け休を含めた連休がとれるようにするなどして、勤務時間を調整していた。
ところで勤務シフトに関連して、2月17日に「日本医療労働組合連合会(日本医労連)」が、介護現場の夜勤の実態を探る調査の結果を公表しているが、その結果に注目してみたい。この調査は、特養や老健・グループホーム・小規模多機能など121施設を対象とし、176職場の回答を得たそうである。
調査結果によると、夜勤明け翌日の勤務免除・休日が、必ずしも保障されていない施設は37.8%もあるという。この数字は前年より3.9ポイント増加しているそうだ。さらに12時間以上の勤務間インターバルが、必ずしも確保されていない施設は25.5%だったそうである。その最たる理由は、介護人材不足の深刻化であることは容易に想像できる。だが、これは由々しき事態である。夜勤明けを休日としてカウントすることは、法律上で認められていないからだ。
労働基準法では、深夜0時をまたぎ、始業日と終業日が異なる継続勤務について、始業時刻の日の1勤務として扱うことを定めている。たとえば月曜日の21時から翌火曜日の6時までの夜勤であれば、「月曜日の勤務」として扱われ、労働時間は休憩1時間を引いた8時間労働として処理されるのだ。(※介護施設の夜勤は、もっと長時間勤務時間となる場合が多い。)
夜勤明けの翌日に休日を与えなくとも、それが即労基法違反となるわけではない。労働基準法35条1項および2項では、「毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日」を与えればよいとされているので、このルールさえ護っておれば労基法違反にはならない。夜勤明けの日に、再び夜勤をさせることも可能である。月曜日の21時から火曜日の6時まで勤務し、火曜日の21時に再び出勤しても問題はなく、この場合も週に1回もしくは、4週に4回以上の法定休日を与える必要があるだけである。
とはいっても、「週に1回もしくは4週に4回以上の法定休日を与えておれば問題はない」と考えるのは危険である。介護業務は感情労働でもあり、身体的な疲れ以上に、精神的な疲れが生ずる業務でもあるからだ。明け休み後に、十分な休みを取らずに再び勤務に就くことによって、精神的な疲労は蓄積されるし、体内時計も狂いが生じて、修正する時間も取れないことになり、身体の疲れも増すことになる。夜勤明け翌日の勤務が続けば、心身に過度な負担がかかるようになり、労働災害につながる危険性も増すのである。結果的にそれは、従業員の数をさらに減らす結果につながりかねない。精神科医療機関に過度な勤務によって、うつ症状が出現して、入院している患者が何人もいることがそれを証明している。
介護福祉士養成校の教員や進路指導担当者は、そのような勤務状況であることが明らかである介護事業者には学生を就職させない。その他の就職希望者も、そうした施設の従業員募集に応募しようとは思わないだろう。だからこそ介護事業経営者や管理職は、シフト作成責任者に無理のないシフトを組むように指導・助言し、常にその状態を確認しておくことが重要となるのであり、夜勤明け翌日の勤務免除・休日が、確実に保障できるような介護事業経営が、求められることを理解せねばならない。それは介護事業経営を継続するための絶対条件と云えるのである。
よってこの部分に手当てする専門部門を設置し、有能な従業員を担当させるなどして、職場内システムを強化する必要がある。ここは資金と人力をかけなければならない部分である。