HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話 > 第154回 地域3分類で介護サービス提供維持を図るという方針について
2025/05/26
我が国の年齢層には2つの山がある。最大の山とはいうまでもなく、団塊の世代の山である。第1次ベビーブームと云われた当時に生まれた「団塊の世代」とは、1947年(昭和22年)〜1949年(昭和24年)生まれの世代を総称する言葉である。そしてその次の山とは、「団塊ジュニア世代」の山である。それは団塊世代の人々の子供が数多く誕生した、第2次ベビーブームと言われた当時に生まれた世代で、1971年(昭和46年)から1974年(昭和49年)生まれの世代を指す言葉だ。
我が国の社会保障政策上の一番の問題点は、第2次ベビーブーム以降は、ベビーブームが存在せず、出生率は低下の一途をたどっているということである。今年2025年中に、団塊世代という大きな塊が、全員後期高齢者に組み入れらえることになるが、それを支える塊の世代として、団塊ジュニア世代があることがせめてもの救いである。しかし、その団塊ジュニア世代が高齢期に入る2040年以降は、次の塊がないために、財政・人材両面での支え手が急速に不足する。だが団塊ジュニア世代が65歳に達するといっても、それらの世代の人がすぐに要介護状態になる確率は低い。それより問題なのは、この時期になると85歳以上の高齢者の数がピークに達することで、要介護者の数もピークに達するということである。生産年齢人口がさらに減少する中で、そのような状況が生まれるのである。これが我が国の2040年問題である。
2027年度の介護保険制度改正と介護報酬改定は、この2040年問題対策に本格的に取り組むということが、論点の中心となっていく。そのため3月3日に行われた「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(第4回)では、高齢化の進み具合や労働力、社会環境などの地域差に応じた、サービスモデルの構築を図ることが、検討課題として挙げられた。
それによると、人口減少や高齢化の進み具合によって、地域を「都市部」「中山間」「一般市等」の三つに分類し、それぞれの特性に応じて効率化や、事業者の連携強化といった対策を検討するとしている。
政府は、団塊ジュニア世代が、高齢期に入る2040年度に、介護職は57万人不足すると推計している。その中でも全国20政令指定都市と、東京23区のうち97.7%で、高齢者数や介護需要が、2040年以降にピークを迎える。これに対し全国の町村の3割程度が、既にピークを越えたと見込まれる。そのため「都市部」とは、大都市圏など2040年以降も、高齢者数や介護需要が増える見込みの地域を分類するとし、そこでは単身高齢者の急増に対応するため、見守りセンサーや、介護ロボットの導入などで効率化を図る。一方で既に高齢者数や介護需要が減少する局面に入っている地域は「中山間」と位置づけ、介護事業者の連携強化や大規模化などで、介護サービスの提供体制を確保する。介護需要がやがて減少に転じる見込みの地域は「一般市等」とし、需要の変動に対応するため、早めの取り組みが必要とした。
今後、これらの分類の地域対策がさらに具体化されていく。例えば「都市部」では、増える介護需要に対し、サービスを提供する介護人材の確保が、最大の課題となるため、兼務要件を緩和して、一人の従業員が複数事業所業務に携わることができるような、配置基準の弾力化が求められるだろう。一方で「中山間」では、事業所同士が連携し、例えばバックオフィスの業務を共同で行うなどの形によって、事業規模拡大を図り、収益を確保できる方策を探ることになる。そのことで途切れることなく、人口の少ない地域のサービスを確保する方策を模索することになるだろう。当然、中山間地加算を現行より手厚く算定できるような、対策も検討されるだろう。
こうした考え方は正しい方向性だと思う。全国一律の基準ではなく、地域特性に応じた柔軟で、かつ大胆な考え方をとっていかないと、介護人材がさらに減少する世の中で、すべての地域に介護サービスは提供不可能になる。特に人材活用の面からは、有能な人材を一つの事業所に固定配置せず、複数の事業所でその才能を生かすことができる、柔軟な配置基準の考え方が必要だ。管理的業務については、オンラインをフル活用してその場にいなくとも、常勤配置とみなすことができる条件を、大幅に緩和する必要がある。
そういう意味で、是非この有識者会議が大胆な改革案を示して、それが社会保障審議会の介護保険部会及び、介護給付費分科会などの審議へとつなげていただきたいと思う。